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あれから朝は一人分多くお弁当を作り、お昼になると黄瀬くんがお弁当を食べにこっちの教室まできて樹と三人で食べるのが習慣になった。
本当は朝か昼に私が届けようと思ったのだが、何故か黄瀬くんに全力で止められて今に至る。
さらに最近知ったのだが、どやら部活中黄瀬くんを呼びだすのは禁止だそうだ。
なんでも彼の入学当初、モデルの黄瀬涼太を一目みようとファンが押し寄せて大変なことになったらしい。
そのため、臨時朝会で校長先生直々に禁止令が出されたというわけだ。
私はタイミングが悪い事に、その臨時朝会の後に転校してきたので、何も知らずに黄瀬くんを呼びだしてしまい男子バスケ部の方々には部活中迷惑をかけてしまった。
特にマネージャーさんと主将さん、ごめんなさい。


-act7-


さて、反省もすんだところで、帰りましょう。
なぜこのタイミングで先日の事を思い出したのかというと、ただ単に黄瀬くんを探している女の子たちとすれ違ったからだ。
まだ部活まで少し時間があるようで、黄瀬くんに会うなら今しかないらしい。
そんな彼女達を見送り、校門へと足を進めた。

「雪野先輩っ!」
「ひゃっ!」

校門を出て帰路につこうとした時後ろから走ってきた誰かに腕をとられた。
振り返ればそこにいたのはさっき女の子達が探していた張本人。

「黄瀬、くん?どうしたの?」
「雪野先輩もう帰るんスか?」
「ええ、部活もないしね」
「じゃあ!俺今から黒子っちに会いに誠凛に行くんスけど、雪野先輩も行きません?」
「くろ?せいりん?え?」

両手でがっしりつかまれながら黄瀬くんの言った事を理解しようとするけどいまいちわからない。
でも凄くきらきらした目で見つめられたら何か分からないけど断りにくい。

「あ、でも、ちょっと遠いんで雪野先輩の具合悪くなっちゃうかもしれないっスよね」
「えっと、あの」

次はしょんぼり顔。
弱いのよ私、その捨てられた子犬みたいな目。
でもどうせ帰ってもやることないし、まだあまり出歩いたことないからちょっと遠出するのも楽しそうだし。

「今日は調子もいいから、行きましょうか。えっと、せいりん?」
「まじっスか?!」
「ええ」

そう頷くと黄瀬くんは楽しそうに笑った。
それから誠凛の字を教えてもらい、そこにいる中学時代のチームメイトの話を聞きながら誠凛高校へと向かった。
嬉しそうに話す彼を見ているとこちらも自然と笑みがこぼれる。
それほど会いたいのだろう。
黒子くんという子に。

「雪野先輩電車きたっス」
「ちょうどいいタイミングね」
「この時間はあんま混んでないから座れそうっスね」
「本当、ガラガラだわ」

ホームに入ってきた電車は朝や夕方の混雑が嘘のように空いていた。
端に二人で座り電車に揺られる。

「そういえば黄瀬くん、部活はお休みなの?」
「え!あー…俺だけ休み、的な?」
「…サボりなのね」
「だ、だって今日逃したら時間無いんスよ!」

明日は仕事だし明後日は試合に向けての調整だしと必死に訴える黄瀬くん。
別に私に弁解しなくてもいいのにと思いながら慌てる姿に小さく笑った。
それからまた部活の話を聞いたり、バスケのルールを詳しく説明してもらったりした。
時間はすぐに過ぎて目的駅で下車し、誠凛高校へとむかった。

「綺麗な高校ね」
「さすが新設校っスね。えーっと、体育館体育館…」

誠凛は黄瀬くんの言うとおり、さすが新設校だと思えるほど綺麗な外観だった。
バスケ部がいるであろう体育館を探して辺りを見回すがそれらしき建物は見当たらない。
こんなところで時間をくうのももったいないので、近くにいた生徒に声をかけ体育館までの道のりを聞いてそこへ足を進める。

「ここよね」
「やっと黒子っちに会えるっス」
「ふふ、でも勝手にお邪魔して大丈夫かしら?」
「ま、なんとかなるっスよ。それより早く中入り…あ」
「黄瀬くん?」

体育館内に入るためシューズに履き替えた黄瀬くん。
その隣でシューズを持っていない私は靴を脱ぎ、靴下のままで入ろうとしたが何故か黄瀬くんに止められた。

「雪野先輩シューズもって無いっスよね」
「あ…でも別に靴下履いてるから」
「ダメっス!」
「だめって、ひゃあ!」
「雪野先輩の足汚すなんてありえないっスわ」
「き、黄瀬くん降ろして?靴下が汚れても洗えばいいのだから」
「そういう問題じゃないっス。いいから、ちゃんと掴まってて」
「え?でも、あの…はい」

抱きあげられているせいで普段の身長差ではありえない距離に黄瀬くんの顔がある。
有無を言わせぬ顔だったので彼の言うとおり、そのしっかりとした肩に手を置く。
それを確認すると、黄瀬くんはそのまま館内に入った。


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ちょっとずつ原作へ。本気の時は「っス」って付けない黄瀬くんが好きだ。


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