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「はい、到着っと」
「ごめんなさい、重たかったでしょう?」
「まさか。雪野先輩軽すぎっス」
「…平均だと思うけど」
「そんなこと言ったらいったいどれだけの女子が平均以上に…」
「あの!」
「え?」
「黄瀬涼太君ですよね!サイン、サインください!」
「私にもください!」
「え、ちょ、ええ?!」


-act8-


体育館のステージ上に降ろされて隣に座った黄瀬くんと体重の話をしていたら、何時の間に集まったのかわからないが凄い数の女の子達がそこにいた。
黄瀬くんの周りに群がるようにいるだけでなく、体育館の外にも沢山。
邪魔にならないように少し黄瀬くんから離れようとしたら、誠凛さんと目があった。

「って!黄瀬涼太!…と、誰?」
「あーもー、こんなつもりじゃなかったんだけど」
「…お久しぶりです」
「ひさしぶり。てかスイマセン、マジであの…えーと…てゆーか五分待ってもらっていいスか?」

結構前から騒がしくなっていたのにも関わらず、誠凛さん達は今黄瀬くんに気付いたようだ。
まあ、あちらはあちらで何やら盛り上がっていたようなので仕方がない。
黄瀬くんは本当にきっちり五分でサイン会をやめ、女の子達を体育館から出した。
その間私はずっと黄瀬くんの隣に座っていたわけで、誠凛さんからの視線にひたすら耐えていた。
黄瀬くんがステージから降りたのと同時に顔を上げたら、一人の男の子と目があった。
どこかで見たことがあるような?

「あ?雪野か?」
「え?」
「俺だよ!大我!昔何回か遊んだろ!」
「昔…」

赤い髪の男の子。
でも大我って、昔夢の中で遊んだ男の子の名前。
ん?でもここも夢の中だから…んん?
わからないけど、取りあえず

「随分大きくなったのね、大我くん」
「当たり前だろ、あれから何年たったと思ってんだ」
「ふふ、それもそうね」
「つーか、なんでここに…」
「ストーップ!」
「うおっ!んだよいきなり!」
「なんだよはこっちの台詞っスよ。なんなんスかアンタ、雪野先輩になれなれしいんだけど」

大我くんと話していたら急に黄瀬くんの背中しか見えなくなった。
彼の纏う空気がピリピリしている気がする。
何故?
首をかしげていると、眼鏡をかけた人がこちらを指差しながら黒子くんに声をかけた。

「てゆーかその子キセキの世代関係者じゃねーの?!」
「…違いますけど」
「火神、お前その美人さんとどういう関係?!」
「どういうって…ちっせえ頃何回か遊んだ事があるだけだよ…ですよ」
「ふーん…」
「黄瀬くん?」

どこか不機嫌そうな黄瀬くんに声をかけたが、振り向いた彼はいつもの彼だった。
気のせい、だったのかしら?

「てかまじで、なんで黄瀬涼太がここに?」
「次の相手が誠凛って聞いて、黒子っちが入ったこと思い出したんで挨拶にきたんスよ」

黄瀬くんと黒子くんのテンポの良い会話を聞いていた時、黄瀬くんに迫るボールに気付いた。

「黄瀬くん!」
「っと?!ったー、ちょ…何?!」
「ちょっと相手してけよ、イケメン君」
「えーでも…うーん」

ちらりと黄瀬くんがこちらを見た。

「いいよ、やろっか!いいもん見せてくれたお礼、それに…雪野先輩も見てるし」
「あ?」
「雪野先輩、これあずかっててもらっていいスか?」
「ええ、でも手は大丈夫だった?」
「大丈夫っスよ。それよりちゃんと見ててくださいね!」
「そう?もちろん、頑張ってね」

黄瀬くんからネクタイとブレザーを預かる。
彼がバスケをしているところを見るのは初めてだから、少しわくわくした。
勝負は一瞬で、決して大我くんが弱いわけではないと思うが、それよりも黄瀬くんは上手かった。
ダンクを決めた彼は、拍子抜けだったようで、黒子くんを海常に誘った。
まあ、結構すっぱり断られていたが。

「ま、練習試合楽しみにしてるっスわ」
「こっちの台詞だ」
「っと、雪野先輩。待たせてスイマセン!」
「ふふ、大丈夫よ。それより黄瀬くんがバスケしてるところ、見れてよかったわ」
「そうだ雪野!連絡先教えてけ」
「てか!まじでその美少女だれなんだよ火神!」
「あ?こいつは…」
「スイマセンけど、この人の事、教える気ないんで。それじゃ、お邪魔しましたー」
「ひゃ、黄瀬くん、あの、降ろし…」
「牽制だから黙って運ばれてて」
「?…あ、あのお邪魔しました。大我くんも、また今度会いましょう?」

黄瀬くんに抱えられたまま、大我くんに小さく手を振った。
それにしても、なんだか黄瀬くんの機嫌が良くない気がする。
わからず首をかしげていると、そっと靴の上に降ろされた。

「ありがとう…黄瀬くん?あっ」

俯いている黄瀬くんの顔を見ようとしたら、手をつかまれ、そのまま引っ張られるようにして誠凛高校から出た。
角を一つ曲がったところで黄瀬くんの足が止まった。

「あの、黄瀬くん、どうし…」
「あいつ」
「え?」
「あの火神ってやつと、どういう関係スか?」
「大我くんと?どうって…本当に小さい頃に何回か遊んだだけよ?」
「じゃあなんで!」

ぐっと腕を引かれて黄瀬くんとの距離が近くなる。

「なんであいつは名前で俺は!…っ」
「名前で、呼んでもいいの?」
「え?」
「いい、の?」
「いいに決まってるじゃないっスか!雪野先輩には名前で呼ばれたいんス」
「えっと、じゃあ…涼太、くん」
「っ!なんスか!」
「ふふ、これからもよろしく、ね?」
「はいっ!」

なんだかわからないが黄瀬くん改め、涼太くんの機嫌もなおったところで帰路についた。


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やっと名前呼びー。昔実は飛んでたっていうね。あ、別に伏線でもなんでもないっす。ただ大我呼びに黄瀬くんが妬くのを書きたかっただけ←そして結構ヒロイン空気でスマ



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