krbs

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じゃあ明日、10時に駅前で。なんてメールが来たのが前日の夜。
仮にも現役モデルの隣を歩くのだからそれなりの格好をと思いクローゼットを開けて気付く。
そもそも、モデルがそんな簡単に女の子と歩くのって駄目じゃないのかしら?
取りあえず確認をしようと涼太くんに連絡を入れると、一分もせずに返ってきた。
全然平気っスよ!
うん、要約するとこんな感じ。
あまり平気ではないような気もするが、やましい事は何もないので涼太くんの言うとおり大丈夫なのだと思う事にした。


-act13-


10時に駅前だったが待たせるのも申し訳ないので20分前には駅前に着いた。
分かりやすいように時計台のすぐ下で涼太くんを待つ。
時間を確認しようと携帯を見ていたら不意に肩を叩かれた。
涼太くんかと思い振り返れば、そこにいたのは知らない男。
道でも聞かれるのだろうかと首をかしげていると何やらペラペラと話しだした。

「つーわけでさ、今から俺と遊ばない?」

どういうわけだ。というツッコミを初対面の人にするわけにもいかず、というかその台詞意外聞いていなかったので曖昧に笑ってごまかした。

「いーじゃんいーじゃん。君みたいな子を待たせる奴なんてほっといてさー」

何がだ。文脈に意味を持たせて話して欲しいんだが。
いい大人が恥ずかしくないのか。

「いえ、あの、私が早く着いてしまっただけなので」
「んじゃあさ、相手が来るまでそこでお茶しよーよ」
「もう後少しで時間になるので…」
「てか外で待ってるとか暑くねー?涼しいとこいこーよ」
「あの、ですから…」
「ね!決まり決まり!」

いや決まってないから。話を聞かない相手に苛立ちを覚えながらも、掴まれた手をどうやって離すかを考えていたら、不意に肩を引かれた。

「人の彼女に気安く触んないでほしいんだけど」
「…涼太くん」

見上げればそこにいたのは待ち合わせていた人で、安心して息をついた。
身長が190近くある男に睨まれ、さっきまでヘラヘラとしていた男は怯えながら去っていった。

「雪野先輩大丈夫スか?」
「ええ、涼太くんが来てくれたから。ありがとう」
「スイマセン。もっと早く来ればよかったんスけど」

途中で女の子に見つかっちゃって。と申し訳なさそうに謝る涼太くんに首を振る。

「時間に遅れたわけじゃないのだから気にしないで?」
「次からは雪野先輩の家まで迎えに行くっス」
「そんな!大丈夫よ? それより行きましょう?時間に遅れちゃうわ」
「オレが大丈夫じゃないんで。そうっスね、行きましょうか」

二人そろったところで映画館へと向かう。

「雪野先輩、何飲みます?」
「私も行くわよ?」
「いいっスよ。雪野先輩のおかげで映画代が浮いたんスから」
「でも…」
「雪野先輩、ここは男をたてて欲しいんスけど」
「そう?じゃあ、ウーロン茶でお願いします」
「ウーロン茶スね。んじゃちょっと待ってて下さい」
「ええ、ありがとう」

売店にいく涼太くんを見送り、近くのソファーに座った。
そこから丁度並ぶ涼太くんが見える。
長身の彼は周りよりも頭一つ出ていて大分目立っていた。
伊達眼鏡とハットをかぶっているのでモデルの黄瀬涼太だとはまだばれてはいないようだが、それでも隠しきれないオーラで気付かれるのも時間の問題だと思う。
そう考えるとやはり私が買いにいった方が良かったのではないか。
いや、でも、ただ座ってる方が声がかけやすくてばれる確率が上がる気もする。
でも…

「あのー」
「…はい?」

一人悶々と考えていたところに声をかけられ顔を上げる。
知らない男の人に首をかしげるが、その向こうに涼太くんが見えた。

「待たせてごめん」
「ううん、ジュースありがとう。それであの、この方が…」
「いいよそんなの。ほら、始まるから行こう」
「え、あ、涼太くん?」

いつもと違う口調の涼太くんに首をかしげながらも、手を引かれるままについていく。

「雪野先輩隙ありすぎっス」
「えっと、そうかしら?」
「そうっス…目、離せねぇ」
「え?」
「なんでもないっス。あ、始まったっス」

聞こえず聞き返すがタイミング良く映画が始まったのでそちらに集中することにした。
中盤に差し掛かったところで左肩に重みを感じた。
ちらりと涼太くんを見ると気持ち良さそうに眠っていた。
部活や仕事で疲れているのだろう。
無理をさせてしまって申し訳なく思いながら、そのままスクリーンに顔を戻した。

「ほんっとスイマセン!」
「ふふ、気にしないで?」

映画館から出て近くのカフェに入りお昼を取ることにした。
その間涼太くんは気まずそうに目を泳がせていたのがなんだか可愛くて密かに笑みをうかべた。
いざ席に着くとテーブルに頭が付くほど下げる涼太くん。

「私こそごめんなさいね?涼太くん疲れていたのに」
「つ、疲れてないっス!」
「なら、退屈だった?」
「ええ?!違うんスよマジで!…雪野先輩?」
「ふふ、ごめんなさい。冗談よ」
「な、マジ焦ったんスけど」
「だって涼太くん、ふふふ」
「ちょ、なんで笑うんスか」
「可愛いなって思っただけよ。それよりほら、食べましょう?」

目の前に置かれた料理を食べるように諭すと不満そうにしながらも料理に手をつけた。
さすがに年頃の男の子に可愛いはダメだったかしら。
しかし、美味しそうに口に頬張る姿を見ると、やはり可愛いと思ってしまうのだ。



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長くなってしまったのでいったんここで。映画デートはさらっと終了。次は街中デート編。これもさらっと終わる気がするが…









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