2nd season 「Time」 

□戸惑う
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 ウミホタル・・体の中のルシフェリンという液が海水と反応して青く発光する。

 筆圧というものを感じさせない、ごく薄い文字だ。だが、とても几帳面にスペルが配置している。語尾のスペルが大きく円を描くようなかすかな癖。子供でもないが教師や父兄ほどの年を取った文字でも無かった。

「ル−ク。これは誰が書いてくれたの?」
「ミカエル」
「何だ?あいつ。ただの病人だと思ったけど、子どもにものを教えてくれているのかぃ?」
「すっごく、たまにね。僕がレイチェルと言い合いをしていたら、ノ−トにこれを書いてくれたんだよ」
「外国人なんだろ?金髪で碧目の」
「だから何?」
「余所者だ」
「だからって、悪い人じゃないよっ。どうして決めつけるの?僕は父さんたちの考えが解らない。漁に出れば公海がある。そこには世界中の国々の人が魚を摂っていいんでしょ?みんなの海でしょ?その人たちの中のひとりがミカエルだっただけじゃん。嵐の日にフェリ−から海に落っこちて、ビックリして、死にそうだったんだよ?」
「ああ。わかった。父さんが悪かったのかも知れんな」
「じゃぁ、明日も学校の帰りにス−ザンっちに寄っていいんだね?」
「そうするほか、ないよ。13歳以下の子どもを一人で留守番させられない決まりさね・・」
「ありがとう。父さん」
「おやすみル−ク」
「おやすみなさい」

















海を見下ろす。
 船着き場から大通りを一本挟んで反対側は、迫りくる山の斜面になっている。そのわずかな土地に階段のように人々の住居が肩を寄せ合うように、高さを競うように建ち並んでいる。背後の山には、まるで土星の輪のように高速道路がぐるり、無機質に突き刺さっている。地図には主要な都市が記名表示されるが、ちょうどその文字の下敷きになってしまう、そんな小さな町だ。




 浮いている。
ここの住民の姿や、夕方、学童保育所に集まる子どもたちを見ても、髪は黒か茶、居ても明るめの茶色、目は黒か茶色がほとんどだ。肌の色は言うまでもない。仕事の関係で、浅黒いを通り越して赤銅色の年寄りもいる。ほぼ、この地から離れることなく、(海には出るが)一生を過ごす人々だろう。
体調不良を盾に、引き籠る。それが一番だと感じる。
 眠れない。
提供されたアパ−トの二階。二部屋あるその一室が、今の私のテリトリ−だ。隣には、旅団の女二名と性別不明の長髪ひとりが居る。なぜ?この状況で、「ゆっくり休め」と?情けなくて、可笑しくて、笑いたい。その声さえも無くしてしまった。飾り気の無い部屋に、シングルベッドがひとつ。水の中ではない。それは有難いのだが・・。ひとりで眠れなくなったのはいつからだろうか?飛行船の個室を思い出す。いや、もっと前・・。シ−ツから、かすかに煙草の匂いがした。嗅覚の記憶が一気に溢れ出す。そう言えば、レオリオも師匠も煙草を吸っていたな・・。そのどちらのものでもない匂い。銘柄がちがうのだろう・・。どの向きに寝返っても、眠りに誘われることは無かった。諦めてふと床を見る。月明かりに北窓が照らされ、フロアに窓枠が十字に影を成していた。部屋の照明器具が壊れている為、昼間は明り取りにカ−テンを開けていたのだ。(私らしくもない。不用心だな)
 窓辺からは、思いがけず月が照らしていた。

月。

 貴様も見ているか?

 いや・・そちらは昼か・・。








 ミカエル!




 翌日から、私はそう呼ばれるようになった。





















戸惑う for Quwrof



『This is C speaking.
最初から狙われていた
男はすごい力で私を海に
突き落とした
姉もグルなのかは不明
Quwrof
私が欲しければ
この町から出してくれ
あまり 待てない
Save a scarlet eyeball - doll from a town.
Over.』









乗船したところで
船医の男に術を掛けられた
だが 何らかの作用でそれが
打ち消された

おそらく

貴様のせいで・・


このことは 言わない

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