長編   Mask

□Mask episode 8
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何の冗談だ?

 枕元に、ピカの携帯をみつけた。

!!

 緋の眼を追って俺を置いて出たのか?新月にピカひとりで出歩くとは、なかなか勇気ある行動じゃ・・なくって、そりゃ、無謀だろう?しかも、連絡が取れないと来たもんだ。全く。帰ってきたら蹴りのひとつでも入れてやるっ!

 帰って来ない。

 おい?

 だんだん、最悪を想像し始めたところへシャルが深刻な顔で俺の前に現れた。

「シャドウ・・ちょっと、いいかな?」
「何だ?」
「クラピカは、まだ帰って来ていないよねっ?」
「ああ」






 クロロとシャルが共同で使っている部屋にそれはあった。





「センリツ、マチ、お前らは見ないほうがいい」
クロロが忠告する。
「何?べつに、怖いもんなど無いサ」
マチは強気だ。
シャルとクロロの心音を聴いたセンリツが心配顔で見上げる。
「団長、これ、クラピカには?」
「見せるかどうか、そのタイミングはヤツに任せる」
「そだね」
そこまで聞いたマチは、察したらしく、モノを見ずに退室することに決めたようだ。センリツと共に出た。















(Syarnorke-side )



これを探していた
そうだね?


温かい毛布も
清潔なタオルにも
包まれることもなく
ただ
瞼を閉じ
眠ることさえ
許されない


何年
そうしてきたの?
ずっと
ずっと
呼んでいた
叫んでいたんだね?


お願い
出して
触って
キスして
暖めて
そして
眠らせて・・・



オレ達は
何と言う事を
してしまったのだろう?



ただ
集める
そんな人生を
おくる
どんな気分だろうか?


強い


倒れても倒れても
起き上がる
ただ
集める


それだけに
命を削って

























それは、異形だった。


 腐敗を防ぐ特別な薬の話。どれだけ珍しいものか。さんざん、口上を述べた後、出してきた品物は、今までの眼球だけが左右それぞれ独立し水溶液に浸した円筒形の容器に漂っているスタイルとは違った。大きな容器に、ひとつなのだ。
 恐ろしいことに、夫妻はコレを愛し、毎日眺めていたのだという。手放すキッカケは、結婚15年目にして、ようやく命を宿したお腹の子どもの為。要するにカネが欲しいのだ。そして、婦人は言った。
「コノ子よりも今はこの子が大切」
幸せそうに自分の下腹をさする。


 あくまでもビジネスと、その場を割り切り、最後まで冷静に、丁寧にシャルは対応した。そして、交渉が成立したその時、魔が差した。

 拠点となるこの館に戻るまで無言。部屋に入るなり壁の一部を殴り崩したのだった。肩が震えていた。こんなシャルを団員の誰も見たことは無かった。


「ごめん。ほかのみんなも、外してくれるかな?」

興味津々の団員達を掃かせ、シャルは自分も部屋を出た。

「シャドウをしばらくひとりにしてやれ!」

クロロがシャルの代わりに静かに、だが強い口調で言った。








         「うわぁ--っ!!!」





 シャドウの悲痛な声が廊下まで響いた。




 ちょうど、その時、クラピカが館に戻った。

 
 




クロロの部屋から聴こえた。

 左腕に巻きついていた金のヘビが声に驚き再びクラピカの髪に隠れようとした。走り出したクラピカに振り落とされそうになる。髪をかきあげ手首に巻きつけた。





「ピカッ!」

いきなり羽交い絞めにされ、目を手の平で覆われた。

(!!)

(ワカ様?どうする?)
(喋れない、これで通す!いいなっ?)
(りょうかい!)

無言で抵抗していると、手首から金のヘビがほどけ、床にペタッと落ちた。思わず踏みそうになるのを何とか避けると、シャドウと向かい合う無理な体勢になり、重なったまま床に倒れた。ヘビは、そんなことはお構い無しに、するするとソファとセットのセンタ-テ-ブルを目指して進んだ。

(小竜、あの子を頼む。私はシャドウと話をつける)
(いいよ)      なんて、悲しい眼だろう。

小竜は長龍から、言い渡された。「ワカの言葉、眼、指先に気をつけること」指先は、小竜も感じていた。時々、不思議な握り方をするからだ。シャドウもする。『印を結ぶ』と表現していた。シャドウが水遁するとき、毎回、同じ握り方をするので気が付いたのだが・・。ワカ様の雷遁は、片手かと見逃すほど速いのだ。言葉、眼については、だいぶわかってきた。長龍は、別れ際まで心配していた。全部は言わない(自分の眼で確かめなされ)だ。






最悪のタイミングでピカが戻った。
とりあえず、今、見せるべきじゃないと判断した。
俺的には、蹴りが羽交い絞めに変わっただけだが、ピカは突然の事、抵抗するのはあたりまえだ。

 
赤ん坊がまるまる保存液に浸されているのだ。それが、まさしく『子ピカ』なのだ。真っ先に頭に浮かんだのが、あのカプセル。瀕死のピカの傷を塞ぐ・・そんな騙し文句にまんまとひっかかり、愛弟子を手放した俺。対面した時は、どれだけ後悔したか。標本だった。お前は緋の眼になり必死に抵抗していた。 自分も浸かってみて解った。治療なんて嘘だ。ただの拷問。
 次に頭に浮かんだのが、苦しいと訴える前に、送り込んできたお前の記憶。かくれんぼうをする『子ピカ』だ。
 コレはそれよりもはるかに小さい。足が折れ曲がっていて、性別の判断は難しかった。生まれてすぐ、と、いうよりも、その前のような気もする。とにかく、異形だ。








(ワカ様っ!)
(何だ?)
(やっとあえたよ)
 ほらっ、あの指をしている。






これ以上ない、悲しい眼で俺を見た。(お願いだから放してくれないか!)パチッと微弱な放電。俺の手を振りほどき、ピカは、テ−ブルの上の『子ピカ』を

         


      見た。







    


















『死後、緋色で定着したもの 頭部とセットがベスト 入手難度 A だったな?』


 ピッ。


「クラピカ、何って?」
センリツがバショウのメ−ルを知りたがった。バショウは画面をそのまま見せた。
「ぶっ壊れていないのが不思議だぜ」
「強い・・を通り越して、怖いわ」
「ああ。だが、ついて行く他は無い、だろ?」
「ええ」








 ここに居る全員をクロロが集めた。おそらく移動だ。一箇所に留まりすぎたぐらいだ。クラピカにシャドウがピッタリと添っている。もう、誰も文句は言わない。あの二人は、二人でセットだ。クロロは結局シャルを参謀に据える、この形に落ち着いた。
 話はシャルが主に進め、所々でクロロが補足した。たまに、クラピカに意見を求められると、手の平に口語で書かれたとうりにシャドウが喋った。それが、嘘のように滑らかに行われる。時々二人は目を合わせる。(これぐらいの口調で良かったか?)(ああ)みたいな具合に。バショウは、完璧に降参した。

 マスコットに成った金のヘビは、会議中に団員から代わる代わる念を食べさせて貰っていた。ろくすっぽ話を聞いちゃいない。フェイタンの順番に来た時には既にお腹いっぱいで、膝の上でうとうとしはじめた。扱いに困ったフェイは固まった。(クラピカのヘビなのだ。変なことをしたら済まない。それから、コイツ可愛い)


「では、移動する」










「シャル、ちょっといいか?」
「何?」
「移動の途中でいい、俺とクラピカに2日、くれ」
しばらく、間があった。クロロとシャルが目を合わせる。
「・・いいだろう。目的地の港町に集合するまで、別行動で」
意外な自由時間を手に入れた。

 これで、ウイングと話しが出来る。


【移動だ。配置換え】アクセルが言うと夜目の利くメンフクロウとコノハズクが飛び立った。同じく夜班のトビネズミとハリネズミに届く。早朝には、同じく地上班のウサギとリスに届けられる。空班のカラスとカケスにはコノハから行く。最後にオカメインコ赤と緑がかわるがわるアクセルに伝わったことを戻す。それぞれが迅速に行動した。何しろ最初の伝令だ。ここで良い所を見せたい!その思いは全員が一致していた。









(おやっ☆移動だねっ★)


 館の屋根の上で、ヒソカが見下ろしていた。

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