長編   Mask

□Mask episode 2
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 クラピカの部屋からクロロとシャルが談話室に戻った。話しの詳細を聴こうと団員が集まっている。もっとも、ボノ、フランク、シズク、コルの4人は、南のアジトに居て今回の騒動とは無縁だが。

 
 クロロは、ソファに深々と身を沈めた。シャルの発言を待つ。シャルは身体を伸ばしながら、呆れたように言い放つ。

「あ〜っ!やっぱ、かなわないやぁ!」
「団長も見たでしょ?クラピカの右手をシャドウはずっと守ったんだ。そして、俺達と話しをしている間、ずっとクラピカの手の平に文字を書いていた。クラピカもシャドウの手の平に指で、なぞり返していたよね?それが、何なのか、俺が気付いて注意を向けると・・」
「すると?」
「今度は、さっきまでと全くちがう方法で書き出したんだ。指の動きを見てもそれだけじゃ判らない暗号にねっ」
「二人とも、顔色ひとつ変えず、表向きは、俺と団長の会話が進んで行くんだ。シャドウはその間、クラピカの考えを同時に聴いているの。ある意味、技だねっ?あれなら、言葉なんか要らないわぁ・・ところどころで、こう、二人の目が合うんだよ、確認するように」
「どれだけ離れていたと思う?もう、石棺から、季節が変わったんだよ?シャドウはクラピカを探し回っていたし、クラピカは【影】をずっと呼び続けていたんだと思う。身体全部のエネルギ−をそれだけに使ってもいいって、そう思って」
「・・・すげえ」

「ねえ。団長、あの二人は、もう、バラしちゃいけないよ。本当に、ふたりでセットなんだ・・」
「小竜は?だいたいアレは何なの?」
「あれはダイモンさ」
「ダイモン?」
「そ。そうゆう部族が昔は多かったんだよ。子どもが生まれると、保険をかけるのさ、身代わりを立てるんだ。お守りとか節句の人形の形態で今も残っている土地もあるだろ?病気や事故から守りたかったんだ。クラピカの場合は、竜だっただけで・・ふつうの子どもは、ウサギとか犬とか猫とかカラスぐらいの小ぶりの動物が多かったと思うけど?」
「ダイモンが竜だなんて、周りの大人たちの期待がどれほどだったか想像出来るね?」
「久しぶりの男子の誕生、でも見るからにアルビノ!こりゃぁ〜弱いって、誰もが思っただろうからね?」
「でも、クラピカは、小竜をとてもよく躾ていると思うよ」
「素直で、良い子だわ」
「あれが、本来のクラピカの性格なんだと思うよ」
「何だが、小竜を見るたびに、責められているみたいに感じるんだ」
「と、言うと?」
「クラピカをあそこまで難しい性格に捻じ曲げたのって・・・俺達じゃない?」
「まぁ・・・ねっ」











「もう、死んだんだ」
いきなり、クロロがシャルの話しを引き継いだ。
「何?」

「クラピカは石棺の祠の中で死んだんだそうだ」
「はぁ?」
「今、動いているのは竜の心臓。本来ならば、本体は死に竜は龍になって千年の命を語り部として生きる、これが一般的。今回は主人であるクラピカと竜の意見が一致し、クラピカの器のまま、もう少し人として生きることを選んだらしい」
「もうすぐ死ぬってこと?」
「まあ、千年に比べれば、な」
「その、取引にクラピカは自分の声を払ったわけだ」

・・・シャドウの解釈のまま、クロロ達には伝えた。否定しなかったので、こうなる。


「それで?クラピカは、この先、ずっと喋れない?」
「いや、竜が喋る。だから、センリツとバショウは、小竜に言葉を教えているんだろう?」
「・・ええ。そうよ」
「肩をはめる時も、センリツに頼べばよかった」
「このメンバ−の中じゃ、小竜が懐いているのは、センリツかな。あとは、やはり、シャドウ」
「ほら、やっぱりシャドウは必要よ」
「そうなるね」
「バショウはだいたい、護衛からも外されていただろうがっ。あんとき、ナゼ直接自分から乗り込んだのサ?」
「今更、それを言わすのか?」
そうだそうだ・・という、不思議な空気が流れた。












「ピカ・・今、話を聴く気分か?」

まるで、長龍の、お耳に届きますように・・だ。
ゆっくりと、シャドウのほうを向く。気があるらしい。

「クリスタルの鎖は結べても殺傷能力は無いんだな?」
うなずく
「緋の眼が発動しないのは、当たり前だ。その心臓では」

!!
(何が言いたい?)

「小竜の方が、ピカよりも、オ−ラの絶対量が上だ」
(小竜を教えろと?主人であり、マスタ−だ。しかも、誓約のやり方もわかっている・・)
ピカの眼が、大きく開いた。
「このことは、クロロたちに知られてはならない。わかるな?」

 シャドウには、既にプランがあるらしい。
とにかく今は体力だ。シャドウは、ん〜と伸びをした。この後に言うセリフは知っている。

「あ〜腹へった・・!」
















「センリツ、入れっ」

まだ、廊下にいるうちから呼ばれる。
かなりご機嫌が悪いか、具合が悪いかだ。

「失礼するわ」

おそるおそるドアを開ける。

 まあ・・・なんて、かわいい!



 クラピカがシ−ツに包まっていた。

心が閉じている状態だ。何も喋らないが、全くひとりも怖い。黙って傍に居るほかは、特に何が出来る訳でも無い。





「センリツ、少しの間、クラピカを頼む。俺はちょっと用事で出る」

「どうぞ」

あからさまに、寂しい・・と目が言っている。

 大きな深い悩み事を抱えた華奢な身体が、悲鳴をあげていた。

(かわって!はやく!おくへ!ワカさまっ!)






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