長編   Mask

□Mask episode 4
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 薄暗いバ−のさらに奥まった席で、場に不釣り合いな男が二人、やけに深刻な話をしている。

「ズシ、あなたが、その念の使い方を決める前に、実際にそうしてしまった例を見てみる・・と言うのはどうでしょう?」
「その人は、私と同じ?」
「操作系です。彼は、私の・・途中からですが、まぁ、兄弟子になります」
「どんな人なのですか?」
「ゴン君、キルア君と同じ時期にCと言う人が居ました。Cの師匠がS。その人です」
「本当の名前は?」
「言えません。ただ、最近は「シャドウ」と呼ばれています」
「影・・ですか?」
「そのとおり。これは、彼の能力から付けられたいわゆる、呼称です。彼は・・ズシ、あなたが入門したての年齢である事件に巻き込まれ、兄弟子を亡くしています。その後、一時期、行方知れずになり、私の師匠、ビスケが後に保護しています。ただ・・性格が恐ろしく卑屈です。ビスケも、私と彼を全く別々に扱ってくれました。おそらく、私への影響を考えてのことなのでしょう〜協会でも異端でした。・・・それが、変わった」
「Cという人との出会いでですか?」
「そうです」

「ズシ。どうやら、飲み物だけでは済まないようです。少し腹ごしらえもしていいですか?」
「もちろん。今日は私が持ちますよ。ですから、その話し、もう少し詳しくお願いしたいっす」
「わかりました。では、遠慮なく戴きますよ」







 ほどなく、注文の食事が運ばれてきた。同じものだが、ウイングは箸が使えず、フォ−クとナイフで、ズシは箸で食べ始める。しばらく、沈黙が続く。

 ウイングは、ズシが実際、彼らに会い、自分はそんなバカげた能力に限定することを諦めることを願った。
 ズシは、自分が考える以前に、そうゆう念を既に実践し、ウイングも一目置くような能力者に会ってみたかった。そして、それを出来れば目の前で見てみたい!・・そう思った。
 
 二人の食事は、思いのほか静かに、そして迅速に、時間を楽しむとか味わうというよりも、ただ、腹を満たすという作業のようだった。ウイングが、済んだから下げてくれという仕草で店員を呼んだ時、「すみません、つい、美味しくて夢中で食べてしまいました」と、礼を述べるのを忘れなかった。さらに、ズシが、「少し、時間を置いてからでいいです。今は忙しいでしょうから、落ち着いてからコ−ヒ−を二つお願いします」と、時間稼ぎをも怠らなかった。
 ウイングは、ズシに、(よくできました!)と合図を送った。






「はじめは、誰もが反対したんです。ル−キ−の多い年でしたから裏試験の担当者はたしかに不足でした。だからといって、その年、一番バランスが善しとされたCを付けなくとも・・と」
「Cとはどんな人ですか?」
「これも言えません。ただ、容姿ならば、金髪碧眼。中肉中背。絵本の中の王子様のような男の子です」
「男の子?」
「ただ、言われなければどちらとも取れるような容姿です。彼は実際の仕事でも自分を有効に使っています」
「綺麗な人なのでしょうねっ?」
「そうですね?ただ、見た目と性格は違った。そこがSを夢中にさせたのでしょう」
「師匠はCさんやSさんにお会いしたことが有るんですか?」

「ええ。何度かあります。心源流の試合で。ただ、目礼するだけですが、彼にはそれでも精一杯の挨拶なのです。弟子を伴って参加し、姿を見せる・・それが彼の言葉そのものなのです」
「ええっ?!」
「気が付きました?」
「はい」
「ズシも見かけたことがありますねっ・」
「はい。絶対忘れません。あの試合の前の手本の組み手を披露された御二人。誰ともお話しなさらず・・クラピカさんですよねっ?KじゃなくてCなんですねっ?それで解らなかった」
「会ってみますか?」
「こ、怖いけど是非、お会いして、お話ししてみたいっす!」

ここで、コ−ヒ−が来た。



ウイングは、砂糖をスプ−ンに大盛り1杯すくい、かき混ぜる。ズシは砂糖無しでミルクをほんの少し入れた。かき混ぜずミルクの描く模様を眺める。
ふたりとも黙ってコ−ヒ−をすする。


「そう、言ってくれると思いました」
「なんですか?その笑いは・・」

ウイングの顔が変わった。真剣な話しになる・・ほら。

「・・・彼らは今、何を間違ったのか?裏の世界に居ます。そして、彼らに協会から討伐令が出ています。ネテロ会長のお気に入りでしたが、会長亡き今、体制がかわりつつあります。A級マスタ−に闇に入り込まれては、我々にとっては脅威です。Sひとりならばともかく、Cを伴う・・Cの発揮するカリスマ性は、団結の力と成り得ます」

「ええっ?」
声がさらに小さくなる。

「そうです。場合によっては戦いになります。でも、私は信じられません。もともと頭の良い人です。善悪の区別も無く行動するとは思いません。誰もその姿を見た訳じゃないのです。小さな食い違いや陰口、羨ましさが嫉みになることはよくあることです。悪い噂に尾ひれが付いて皆で面白がっているだけかも知れません」


「反論しないのですか?」
「そんな人物ではありません」
「では、二人について自分で調べてみます」
「無駄です。彼らの情報は何処からも入手できません」
「まさか・・」
「シ−クレット。そのとおりです。それから・・今のうちに言っておきます。彼にとって、C意外はすべて敵です。彼はCを守る為には何でもします。Cの声さえも封印出来る能力者です。CともSとも、絶対に目を合わせてはいけません」
「なぜですか?人の目を見てお話ししないなんて、失礼ではありませんか?」
「ズシ・・」
ウイングの顔が険しくなった。本気だ。
「まさか?」
「そうです。彼らは、遣える」
「瞳・・術・・」
「そうです!」
彼ら。御二人ともに遣えるってことですねっ?凄いです。
「わ・・わかりました」
「それから・・」
「もちろん、言いません!」
「よろしい。私も、私の弟子を守る為に、最大限、知る限りの相手の能力を伝えました。ズシ。あなたも、将来、マスタ−と成り、このような状況がもしも来たならば、口伝してください。それから、」
・・・ここで、いったん言葉を切った。視線を左に流した。
何かが動いた気がする。 緊張が走る。

気のせいか?言葉を続ける。

「親、親族、友人、それから私が殺されても、決して恨んではいけません。復讐からは何も生まれません!いいですねっ?」

ズシは、黙ってうなずいた。

(とんでもない兄弟子もいたもんだ・・)ウイングとズシの思考が一致した。
























「遂に、出た。37対目、極美品」

へえ・・生きている緋の眼にこだわっていたんじゃないんだ?

ヒソカは、パソコンの画面をゆっくりと下へスクロ−ルしながらニヤリと笑った。

っていうか、餌を蒔いたってこと?これに掛かる獲物は大きいのかな?クラピカ・・。

緋の眼とは一言も書かれていない。そのせいで、つぶやきは瞬時に書き込まれた「何のことですか・」から「見てみたいです」まで。反応はいろいろだ。この中から本物を探し出すなんて、出来るのかい?

 さらにヒソカの推測は続く。

このチャンネルをクラピカ自身が頻繁に閲覧するとは考えにくい。と、すれば、書き込みは代理人?例えばゾル家の次男。ありえる。だが、彼にここまで緋の眼の話しをするとは考えにくい。長男イルミか?彼なら、もっと直接的、インパクトを大切にする。写真つきとか。
 もうひとり、心当たりが浮かぶ。
------ シャルナ−ク --------


ああ。そ ゆ こ と 。

いくら探しても見つからない訳だ。
バカだねっ?クラピカ。
自分から、蜘蛛の巣に飛び込んで行ったのかい?
大方、限定の念を勝手に誓約した親を人質に捕られて、しかたなく〜って、そんなところかな?


 さらに、ヒソカは思考を深く掘り下げた。

「手伝ってって」こと?
「手助け」?
「助けて!」?




 どちらにせよ、相当、弱ってるってことだねっ☆




キラリ。 ヒソカの眼が輝いた。

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