2nd season 「a voice」

□ 旅団編 弐
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巨頭会議。
クロロ、シャル、クラピカ、シャドウ、この四人での話がそう呼ばれる。だが、此処に居る人間は3人だ。場末のホテルの一室。何処を見渡してもあのキラキラした金髪も白く細い華奢な身体も見当たらない。

 クロロがやや遅れてやってきたのに、シャルが気が付いた。一瞬、円が緩む。だが、クラピカが居ないことに既に機嫌を損ねているクロロの顔を確認すると、いっそう強固な円に発動し直した。

「この時間に、俺を呼び出すとは?」

シャドウをジロリ睨めつける。三白眼に怯みもせず、シャドウは山のように静かにソファに身を沈めたままだ。よっぽどお気に入りなのか、黒のサングラスは掛けたままだ。

必要最低限の発語しかしない、今日もそのつもり?今まではクラピカが全てを補足してきた。言葉でも眼力でも。でも、今は、ちがう。解るように説明は必要になってくる。

「久しぶり。団長、今日はね」
遮るようにいきなりシャドウが円を発動した。しかも、『黒の円』だ。そして、シャドウが声を出した。だが、その語り口は・・・・まぎれもなくクラピカだ。

『まず、クロロも円を張ってくれ。他の誰にも聞かせたくない』

弾けるようにクロロは言葉に従った。さらに次の指示がとぶ。
『シャル、携帯を預かる。今から言う事を録音されては困るクロロ、シャドウ、貴様もだ』











俺と団長は、その話を聞いて、呆然としている。









 シャドウはクラピカに身体を乗っ取られた後は、昏々と眠るらしい。しかも、クラピカが覚醒したことを本人は分からないらしい。なんてことだろう。小竜とクラピカもそうだったの?いや、彼らはもともと本体とダイモンという壱個体だった。だから同時に悪巧みも考えつくし、発語無しでの会話が成立していたと小竜から聞いたことがある。もっとも、小竜が嘘を付いていなければ、だが。あの子がペロリと嘘が言えるほど、言葉が出来たとも考えにくい。めちゃめちゃシンプルでストレ−トだった。
 操作系の基本。”操り人形”まさか、それを自分自身に。まあ、俺も自分にアンテナを突き刺したことは有る。だが、その後に来る反動を考えると、そう何度も使いたくは無い。
 クラピカも、そのことに配慮しているのか?覚醒の時間はごく短かった。それだけに、そのインパクトは大きかったのだ。ただ、いくら、ペアの念を誓約するほどに心が通っていたとしても、憑依された状態で、本人が本人として、自分の意思なり意見なりを言えるのだろうか?どんな気分なのだろうか?この先、シャドウとしての時間よりも、小竜とクラピカがそうだったように、クラピカが身体を侵食していくのだろうか?
 今、ここで有ったことは、どの軸での出来事だったのか?
自分達は現在の軸に戻して貰えたのか?そこまで疑いたく成った。








『私は私の象徴とも言えるものをシャドウに贈った。
それはペアの念の発動中だった為、今でもシャドウは主人である私の存在を感じている。
発動の条件。【Reverse】要するに、ペアの念は私が屋形、シャドウが影武者、つまり「光と影」となった時に成立する。
手順については話せない。私が解除しない限り、それは続く。
シャドウの誓約は私が死ぬと自分も死ぬというものだった。それを見抜いた私は、目的を達成するために、シャドウの命を守る為に。・・シャドウを頼む・・』






自分の声で自分を頼むと言っているようで、不気味だった。







「団長?」

クロロは、何がおかしいのか?カラカラと笑った。

「何処までもめでたい奴。シャル?お前は分かるか?普通は、自分が大将に成ろうと努力するものだろう?だがコイツは、最初っから”他人に仕えることで発動する”間接的な念を精進したのだ。もしも、クラピカに出会わなかったら、誰にも仕えられず、力を発揮することも無い念。俺なら、そんな念を精進しようなどとは思わない」

「シャドウに興味が湧いたね。どうゆう環境?境遇?性格はあれがもともと?でもクラピカが心を開くほどだから、何か仕掛けが有る筈だと思う」

「ああ」

「クラピカの言葉を真似、俺たちを従わせようとしているとも考えられる。だが、乗っ取られたとしなければ、この無防備な眠るという状況は生まれない。頼む・・というのも、まんざら嘘では無い気もする」

「とにかく、7対をルクソの山に還すんでしょ?問題は、団長とシャドウが二人で上手く行動できるかじゃないの?」

「誰か連れて行く?」

「まだ、誰とは決められない。連れて行くのかも」

「一晩、考えてみれば?」

「そうさせてもらう」

「団長?」

「なんだ?」

「大丈夫?」

「ああ」

どうしたのだろう。団長がシャドウよりも、小さく見えた。

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