短編   Michael

□Michael 3
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町は、月末に迫った「聖人の祭り」の準備で華やいでいた。大騒ぎするでもなくどちらかといえば静かな祭りらしかった。聖歌の練習もそこいらじゅうで行われている。ただ、聖人に見立てた人物がなかなか決まらない。そこへス−ザンのアパ−トのミカエルではどうか?と、誰からとも無く話が持ち上がり、本人に打診する前に、ほぼ決定のような雰囲気さえしているのである。
「聖人の祭りって、何をするの?」
「いろいろあるらしいけれど、収穫祭みたいなものじゃないかな?」
「それで、ミカエルは何をするの?」
「立っていればいいらしいよ」
「ひとつだけ。困ったことに、何か言わなきゃいけないらしいんだ」
「へえっ?声、出ないじゃん」
「それだよ。  団長に頼めないかなぁ?」
「意外と飛んでくるかもよっ?待たせすぎているもん」
「どうだろう・・聞いてみるよ」
そこで、クラピカがマチの取り出した携帯に反応した。どうやら自分で言いたいことがあるらしい。
「ちょっと待ちな。私が喋るから。そのあと、メ−ル画面にしてやるから、自分で打ちなよ」

団長とは、アッサリ連絡が取れた。近くまで来ているらしい。今夜のうちには合流できそうだ。

「ミカエル、何だって?」
「シズク。あんたもその名前で呼ぶわけ?鎖野郎じゃなかった?」
「でも、みんなそう呼ぶし。鎖って物騒な感じしないし〜クラピカだっけ?それ、言いにくいんだ。発音、苦しくない?」
「ああ。わかる気がする。 じゃぁ、ミカエルでいいよ。 って、 あいつメ−ルすぐ消しやがった。団長に聞くといいよ」




 かくれんぼうをしてた。
ついに、隠れる場所が無くなり、オニが近づいてくる。子どもは思わずス−ザンの寝室へ入ってしまった。(そっちはプライベ−トル−ムだ。入ってはいけない。)と、言いたかったクラピカだったが、自分がオニだったので、子どもは逃げ込むしかなかったのである。 しかたなく、自分もス−ザンの部屋に入り、すぐさま子どもを廊下に出した。しかし、そこで足がすくんで動けなくなってしまったのである。  無理も無い。  ベッドサイドのテ−ブルから、[ 緋の眼 ]が一対、こちらを見ていたのだから。



ここに居てはいけない! 一刻も早く、このアパ−トから出たいと思った。 感情にまかせて無謀な行動に出てはいけない!と、もうひとりの自分が頭の中で叫ぶ。 しかし、クラピカの眼は既に色が変わりつつあった。同時に、聴覚、臭覚、すべての感覚が研ぎ澄まされていくレベルに進んでいた。
(子ども達がまだ居る)急いで自室のバスル−ムまで戻ることに決め、身体を無理やり動かし退室した。廊下に出たところで、バイトが早あがりでたった今、戻ったマチと目が合った。
「ミカエル!」(アンタナニヤッテンノ?)
「ただいま。お出迎えとは嬉しいねッ」
マチは持っていた上着をふざけたふりをしてクラピカの頭からかぶせ、そのまま階段のほうを向かせた。クラピカの背中を軽くポンポンとたたきながら、子ども達には「ちょっと疲れたらしい。きょうはここまでだよ」ス−ザンには「祭りの話をしてみるよ」とさりげなく声をかけながら。2階へ連れてあがった。


「ったく!なに色変えてんだよっ?団長に話ってのと関係アリだろ?」
うなずく。
「ス−ザンの部屋になんか居た訳?猫とか蛇とか?」
首を横に振る。
「何?派手な下着でも見せられた訳?」
黙る。
「ダメだこりゃぁ。やっぱり、団長に返してもらいな。不便でしょうがない」
・・・
「ひょっとして、アンタも感じているのかい?このアパ−トの嫌な感じ・・」

クラピカがゆっくり うなずいた。

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