短編   色硝子

□色硝子 1 
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 電池が切れたら、アイツの命までシンクロして消えてしまいそうな、そんな気がするのはナゼだろう。充電だけはいつも気をつけていたクラピカの携帯。3日おき、ほぼ定刻に着信がある。マフィアの定時連絡か何かだろうか?オレが出ていいものではないだろう・・。オレが出ることで確実に話がややこしくなるだろう〜ええい、どうせなら、着信音そのものをゼロにしてしまおうと、手に取った。と、同時に偶然かかってきた電話を取ってしまった!

「やあ▽」
この声は・・。
「ヒ、ヒソカか?」
やや、沈黙。
「おや?本人はどうしたのかな?」
ホントのことを言ってもいいのか?こんな時、クラピカなら、どう答える?
「出られないような状況なのかぃ?」
沈黙を守ると、さらに質問はたたみかけられる。
「キミは、たしか・・ワイシャツのお兄さんだよね▽」
「そうだ。レオリオって名前はあるんだがなっ」
「そ。 で?クラピカは、そこにいるんだろう?代わってくれないのかな☆」
「居ないんだ。うっウソじゃねぇ。訳あって携帯は預かっている」
ギリギリOKだろうと思いつく言葉を返す。
今度はヒソカが沈黙した。どんな考えがヤツの頭の中を巡っているのか考えただけでゾクゾクした。
「レオリオだったね。・・ボクがクラピカと時々連絡を取り合っていることは承知かぃ?」
「おう。聞いたことがあるぜ」
また、いやな沈黙。
「めんどくさいから、レオリオ、キミの携帯を教えなよ★」
しかたなく、番号とメ−ルを交わした。
 






確かクラピカは春のジャポンへ行くと言っていた。そこで、クロロの除念を知らせてやったが、掛けた本人が既に知っていた。それを承知の上で、クロロに会うのだと。 何らかのアクションがクラピカからあるものと、心待ちにしていた。しかし、時間がかかりすぎている。
 GIでゴン達がゲ−ムを全クリしたこと、その後の蟻事件の噂も、ヒソカはここ天空闘技場で耳にした。期限が切れないギリギリの日付けで対戦をし、ゆっくりと時間稼ぎをしていた。特に手強い相手も現れず、正直飽きてきたところだった。メ−ルではリアルタイムの情報交換とはいかない。通話にしたのはそのためだった。
 ところが、意に反して出たのはレオリオ。 自分を恐れている為か?短い会話だったが、必死に言葉を選んでいる感じは確かだった。何が言えない?
 フロアマスタ−になり、今日も久々の対戦を終え、シャワ−を浴びていた。携帯が鳴った。液晶の相手の名前を目認すると、シャワ−のコックを止め濡れたまま携帯をとった。
「やあ。ヒソカ」
「めずらしいね★イルミ。キミのほうから連絡なんて」
「ねえ、最近どうしてる?マジでバトルやらない?」
イルミは、レル−トとリッポ−の話をした。
「おもしろそうだ。じゃぁ、あとで」
「あ。そうそう、ヒソカ。」
「なんだい☆」
「あの、金髪の子、覚えてる?今、ちょっとヤバイことになってるらしいよ」
「そうなの?その話、会ったら詳しく知りたいな★」
「気が向いたらネッ・・」

(さて、次のバトルまで三ヶ月。十分だ)ヒソカはイルミと合流すべく移動をはじめた。








この季節には薄い衣裳を着せられたクラピカの身体は冷え切っていた。服に着替えさせ暖かい飲み物を差し出した時、「構い過ぎだ」それを飲ませもせず団長はクラピカを攫って行った。薄い唇の端を少し上げただけの笑いで。 瞬間、クラピカと目が合った。泣いた後の・・何とも表現しがたい、・・・多分ヤツの素の顔だった。                         コンテナ船側の海に身を投げて消えたミカエル。港町の人々が口々に叫んだ。「あなたの気持ちを聞かなくてごめんなさい!」「あなたのことを知らなくてごめんなさい!」「ミカエル!大好きだった!」「見た目だけで決めて、おれらはミカエルの性格も事情も知らんかった。すまんことをした・・」ひとりひとりが手に持つキャンドルの灯りが一点めがけて集結する。自分は鳥のように高い所からその様子を見ている。やがて人々の声も光も届かなくなった・・。

 マチは目が覚めた。また、祭りの夜の夢だった。
ねっとりとした気だるい空気が身体にまとわりついている。 流星街のアジト。もどってみたものの、誰が待っているわけでもなく、何が有る訳でもない。ひとつのピリオドを打つ為?とりあえず元居た場所に帰った・・そんなところだ。
 絶えず流しっぱなしになっている水場に行き、顔を洗い、着替えた。 何とか夜露が凌げる程度の広間へ出ると、めずらしくシャル、コルトピ、シズクが揃っていた。今朝一番の廃棄船から持ってきたと思われる食料が、真新しいラッピングのままテ−ブルに置かれている。電気も水道もガスもある。税金もかからない。もう少しマシな基礎工事を施し、その気になれば、この街中の廃材でも立派な建物だって出来るはずだ。ただ、衛星からの画像解析に引っかかるのもつまらないし、ここで家族ごっこをするつもりも無いから、誰ひとりその気にならないだけだ。自分だけがまだ、ミカエルから心をリセット出来ていないことを他に知らせるのは気が引けたが、どうにも中途半端な終わりに我慢ならないのも事実。思い切って打ち明けることにした。

「おはよ。みんな早いね」
「「「おはよ」」」
「・・あのさ。朝からなんだけど・・ちょっといいかい?」








「ん〜マチの言いたいことは、なんとなく解るよ。鎖野郎・・ミカエル・・えっと、クラピカは、ウボ−を倒したんだから団員に成る資格はある訳だし。第一、団長が何だかお気に入りだしねっ?ただ、今はあの通りの体調不良っていうか、覇気が無いっていうか、無気力っぽいところが危うい感じだな。自分で無抵抗のうちに敵に捕まったことを認めたくない気持ちから、本能的に現実逃避で、そうしているのか?あ、もしかして何かの念かも知れない。今までだって敵が多かった訳だろ?弱い念だけど、掛かりっぱなしになっているのかも知れないね。団長、そこに気が付いて、除念してくれるといいんだけどねっ?長いこと操作系の念にでも掛かっていたら、それこそ厄介だな」
「シャル。それからねっ、クラピカに新しい携帯を持たせたいんだけど、作ってくれる?」
「届けるのを理由に会いに行くつもり?それは、やめた方がいい。逆に、元の携帯を取り返したほうが早いよ。多分、仲間がハンタ−証もセットで持っているだろうから。最後にそのハンタ−証が使われた形跡をたどれば、仲間の現在位置ぐらい、割り出せるだろ?」
「クラピカの名前でどっかに呼び出せば、そいつはキット、のこのこ出てくるはず・・か」
「そうゆうこと」
「ここに居ても、つまんないしねっ」
「いや。ひとりでいいよ。どっちみち、団長は、アジトには戻るつもりだから、サッと行ってパッと獲って来るよ。団体で行く必要は無い」
「まぁ、マチがそう言うんなら、いいよ。コルもいいねっ?それで」
「・・・」
「じゃぁ、早速、現在位置を探して、トラップを仕掛けてみますか!」
「頼んだよ」
「OK!」
そこで、シズクがあることを思いついた。
「マチ、ミカエルっぽく髪型変えたりしてみようよ。カラコンも入れてサ。おもしろそう〜」
ここまで、黙っていたコルが、うんうん!と、うなずいた。

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