daily of prince

□Aaiantum
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「さて、なんでここにおるんか分かるか?」

そう白石が切り出した。ヒョウ柄がトレードマークで、燃えるような赤毛はメンバーの中でも目立ち、ゴンタクレが通り名であり、たこ焼きをこよなく愛すワイ―遠山金太郎(途中よぉ分からんなった)は、ただ今日曜日にも関わらず、白石の家に呼び出され(銀とユウジ、小春以外おる)、机の前に正座で(なぜか千歳と謙也、財前も)座らされておる。(しかも白石は腕組んで見下ろしてるんや)

「うーん…分からんなぁ」
「あの、白石?オレらが座らされてる理由も分からないんやけど…」

謙也がおずおず手を挙げて白石に言うが、ちらっと見ただけでまたワイに視線が戻された。今にも毒手が来そうで怖いやん。

「それは今から分かる。金ちゃん、校内模擬テストあったやろ?」
「あぁー、あったな!」
「オサムちゃんがな、金ちゃんはスポーツ推薦で入れる学校は多いけど、さすがにマズイから勉強教えろ言われたんや」
「そんなひどいとね?」

白石がぴらりと問題用紙をみんなに見せて、山の写真を指差した。財前がなんで持ってるのか聞いたら、オサムちゃんが渡したらしい。

「"図1の山の名を答えよ"。金ちゃん、なんやこの"ハイジがいる山!"って」

ぶっ!!
白石とワイ以外が吹いた。なんやひどいなぁ、間違ってないやろ?

「ぎゃははっ金ちゃんそれマジで書いたんか!?」
「ホンマやで〜」
「"図1の山の特徴は?"これおもろいで。"空から空中ブランコがあること"やって」
「くぷぷ…っ、傑作や!」
「当たってるやろ!?」
「当たってへん。これ富士山や。マッターホルンちゃう」

山なんて全部同じやん。厳しいこと言うな、白石は。千歳と謙也は、これはマズイなとか言っとるし。そんなマズイか?

「なぁ白石、オレら関係ないんじゃ…」
「これからや。"この城の名前は?"はい、金ちゃん答えてください」
「ラピュタやっ!!」
「ぶっ!」
「ぷぷっ…ホンマに言うてんの?これ大阪城やん。アホや」
「はーい、金ちゃん、これは何?」
「ポニョやっ!」
「シャチホコやで!」
「これは誰や?」
「ポルコ!」
「豊臣秀吉やん!日本人と外人の名前の区別つけなアカン!」
「ち と せ く ん」

ワイ何か間違ったこと言った?にっこり笑ろう白石に対し、千歳もにっこり笑ろうてなぜか汗を流しておる。それにしても君付けってキショいな。

「な、なんデスカ…?」
「あれほど金ちゃんの前ではジブリ禁止って言うたやろ!」
「いや、その〜、まさか信じるとは思わんかったと…」
「金ちゃんはなんでもかんでも信じるんや!」
「白石は母ちゃんみたいやな〜」
「兄ちゃんや!それに謙也も笑ろうてるがな、お前のせいで、数学の解答欄全部"スピードスター"って意味分からんこと書いてるんやで!?」
「え!?オレのせい!?」
「先輩アホや〜。白石部長、思ったんやけど、このノリだと部長だって金太郎に影響与えてたんじゃないすか?」

ぴたっと白石が止まった。なんかさっきから話についてけないなぁ(ちゅーかワイを会話に入れさせない空気や)。そんな間違ってるんか?

「…英語と理科に与えてたわ。energyの意味を見事絶頂って書いてん。てか"e"から始まる単語は全部そう書いてあった。"p"は全部ピアスやで」
(それだけでオレ、正座の刑?)
「理科は8割方"毒手"って書いてんの。"下の箱の中から危険な薬品を選べ"ってのも"毒手"やで?ちなみに"天然記念物に指定されてるこの動物は何"っちゅーのはかなりの傑作や」
「これってどう見ても日本猿だばい。他になんかあると?」
「そしてはなまるもらってるんよ」

そこまで言うとみんなワイの方を見た。そうか、これ日本猿やったんやな。猿はどれも同じに見えるやん。種類なんて分からんよ。

「金ちゃん…なんて書いたん?」
「金色小春やで」

ぎゃははっあははっ!!
謙也は転げ回ってるし、千歳は机叩いて笑っとるし、財前はお腹押さえて笑っとる。白石はため息。

「な、なんでそんなに笑うんよ!?間違ってへんやろ!?」
「小春達いないの納得だばい」
「金ちゃん、アカンで、ホンマに。いくら成績関係ないから言うて、問題ありすぎや。自分の間違いに気付いてない辺りが」
「あー、笑ろた。確かに四天やったらウケ狙えてそのノリでも全然いけるけど、他じゃあマズイなぁ」
「てか白石部長、オレ関係ないんやけど、帰ってええすか?」
「ダメ。後輩の面倒をちゃんと見なかったという責任がある」
「(こじつけ…)金太郎に勉強教えるだけやったら部長だけでええやないすか。1人に対してこんな大人数いらないし、部長苦手教科ないんやし」
「ワイも勉強いややっ!」
「…言うこと聞けへん後輩共はレギュラーから外すでぇ」

ということによって無理矢理勉強会が開かれたんや。なんで白石の家かっちゅーと、ワイの家だとワイが漫画読んでたこ焼き食べて寝るっちゅー事が分かり切ってるからやめたんやって。そうかもやけど…改めて言われるとなんかダサいなぁ。

「ecstasyやからな」
「いー…くす…?」
「ってぇぇ!なに教えてんねん、白石は!!」
「いや、ちゃんと正しいスペル教えなきゃアカン思って」
「そんな義務感いらんわ!」
「バルスって呪文があって…」
「復活の呪文か?」
「現実見ろや!」
「あの人は猿やなくて、モーホーや」
「もーそー?」
「ざいぜーんっ!変な言葉教えんな!」

ん?んんん?つまり…なんや?バルーンの牛さん靴下?よぉ分からんなぁ。きっと歴史の…なにか?覚えておくか。

「もうアカン!金太郎以外居間部屋行きや!」
「…ええけど、ちゃんと教えれんの?」
「お前らよりマシや!最終手段、金太郎!」
「おん?」
「正しいのを覚えるんや!さもないと…耳貸せや」
「?」

ごにょごにょ

「!!!!!
アカンっ!アカンでぇ!ワイ真面目に覚えるから、それはナシやっっ!」
「何…言ったと?」
「言わん!ほら、聞いたやろ?さっさと出てく!」
「お、おん…」

しぶしぶ出ていく白石御一行。謙也の気迫に負けたとも言うがな。ワイも真面目に勉強や!え?何言われたか?謙也がみんなには秘密や言われたから…秘密や!


「"あれ"と"これ"とその複数形は?」
「うぅーんと…this,these,that,those」
「theseとthoseの後ろは?」
「必ず複数形」
「教訓として教えた英文言える?」
「えーと…Being myself…there a-ain't no…doubt about it!言えたで!」
「金ちゃんが覚えとる…!」

4時間後、みんな部屋に戻ってきて、発表会。ん?お披露目会?みんな信じられないという感じでワイの方を見る。ワイだってやれば出来るんやで!4時間とか初めて勉強したなぁ。

「まだ驚くには早いで!消化酵素のはたらきにより最終的になる養分は?」
「うん?えーと…デンプンはブドウ糖、たんぱく質は…なんやったかな?あれや、アミノ酸や。脂肪は脂肪酸とグリセリン」
「それらの後は?」
「んと、ブドウ糖とアミノ酸は、大…ちゃう、小腸の絨毯…やなくって、柔毛から吸収されて、妄想…毛細血管に入るんや。毛細血管には、ブドウ糖とかの他に、無機物とか入ってて、それらは、はじめに感想…やない、肝臓に運ばれて、そこで食べられ…蓄えられたり別の物質に変わったりしたあと、全身に送られる!脂肪酸とグリセリンは、柔毛に吸収されたあと、再び脂肪になってりんご管…リンパ管に入って、首の付け根付近で血管に入って全身に運ばれる!おわりっ!」

謙也がどーだ!と自慢してんけど、みんなお口ぽかーんや。まぬけ〜。

「これ…金ちゃん…やろ?」
「白石ひどいで〜!ワイはやれば出来る子ちゃんなの!」
「基礎的なのはさらっと教えといたでぇ。もうこれで困らへんな!」
「ホンマ何言ったんすか?」
「お前らに言って変なこと吹き込まれたらアカンから教えん。金ちゃんは無垢なんやで!」
「気になるばい…」

気になるか?じゃあ特別に教えたる!謙也がな、覚えなきゃもう一生たこ焼き奢らない言ったんや。しかも食べるのも禁止で食べたら毒手の刑やて。部活の帰り道も白石付き添いで、寄り道で食べようとしたら即毒手やって!んで勉強忘れて時点でこれは有効にされるんや!地獄やーっ!

…え?これだけやけど。だって、たこ焼きを食べれなくなるんやで!?いつもなにかと奢ってもらってたから、奢ってもらえないのもかなりキツいんや。やったらなんとしてでも覚えなあかん。あ、そだ。

「謙也ー!ワイ頑張った!たこ焼きおごってー!」
「しゃーないなぁ。ええよ」
「やった!」
「せっかくやから、みんなでごはん食べに行こうよ」
「お、よかね!」
「言い出しっぺのぶちょー、奢ってくださーい」
「たこ焼きならええよ」
「え、オレにはねだらないの?」
「そんなお金使いたいんすか?」
「だって先輩2人が後輩に奢っとるのに、オレだけ奢らないって…ケチっぽい」
「じゃあ…お好み焼き割勘してください」
「微妙…」
「はよ行くでーっ!たっこやきー!」

なんやかんやで後輩想いの先輩を持てて、ワイ幸せやな!みんないるうちは、たっぷり甘えるでぇ!
ワイは世界で一番幸せな後輩や!

end


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