daily of prince

Have you seen my cat anywhere?
1ページ/1ページ



「あれ…カルピンがいない…」

おかしい。完璧にオフな日には必ず昼には帰ってきて(昼御飯をねだりに)オレに顔を出すのに。どこに行ったんだろう。

家の辺りをくるりと探してみる。けれどそれっぽい影は見当たらない。せっかくいつもより高い缶詰開けたのに…(それが美味しいかどうかは知らないけど)。

………困った。

ひょいと玄関に顔を出す。

「菜々子さーん。カルピン見なかった?」

ちょっと声を大きめに言えば、ぱたぱたと菜々子さんがやってきた。

「カルピンですか?」
「うん。まだ帰ってきてないんだよね」
「おかしいわね、リョーマさんがいるのに帰ってこないなんて」
「ちょっとそこら辺捜してくる」
「気をつけてね」

うん、と返事をし玄関を出た。最近はカルピンの行動範囲が広くて大変だ。どこから捜そう…。
ストテニの方に行ったら、なんか厄介なことに巻き込まれそうだから、近づくのもそっち方面に行くのもやめておこう。というかそこにカルピンがいないことを祈っとこ。
通学路を辿ってみよう。


…いない。
通学路のどっかにはいると思ったのに。商店街へと続く道の方を捜してみよう。

「おっちびー!」
「菊丸先輩」

前から楽しそうに手を振ってこちらに来た。見た感じ、買い物帰りのようだ。

「何してんの?」
「カルピン…うちの猫を捜してるんっす。見ませんでした?」
「あぁー、あのタヌキ猫ちゃんね。見てないなぁー」
「そうっすか」
「なになに脱走?」

脱走というよりも迷子…なのかな。方向音痴なような気もする。行きたいところに自由に行くくせに迷子になる。誰に似たんだろう。まさか…オレ?

「一緒に捜してあげたいけど、今から昼ご飯なんだよなぁー」

そういってファーストフードの紙袋を見せる。結構な大きさからして、兄弟分かな。オレも昼食べてないや。

「大丈夫っす。それじゃ明日」
「ホント悪いね。じゃあね、おちびー!」

手をぶんぶん振りながら去っていった。先輩にテンションが低い日はあるのかな。…ないだろうな。

そんなことを心の隅で考えていたら、前から見覚えのある二人組が歩いていた。なんとなく知らないフリでスルーしよう。

「…あれ、越前くんじゃないか。うわ、なにその態度。知らないフリ?話し掛けないほうがよかったのかなぁ。気が利かなくて悪かったね。どうせオレは空気読めないよ」
「よお、お前も買い物?」

ぼやく伊武さんを気にすることなく軽やかに挨拶をする神尾さん。正反対の二人なのに仲いいなんて不思議だよね。

「こんちは。買い物じゃなくてうちの猫を探してるんっす」
「猫ぉ?どんな?」
「ヒマラヤンっす。見かけました?」
「ヒマラヤンだなんて高級猫を飼ってるのか。なにそれ、キミは金持ちだって自慢したいの?つくづくムカつくなぁ」

いや、どんなって聞かれたから答えただけなのにその返事はさすがにないでしょ。文句を言うなら聞いてきた神尾さんに文句言ってよね。オレに言うのは御門違いだよ。

「見てないならいいっす」
「いや、探すの手伝うぜ!音速で探してやるぜ!うん、いないな!わりぃな、力になれなくて!」
「……音速で探すの終わったっすね」

何が起こったかというと、ただきょろきょろ周りを見て終わり。そして無駄に笑顔。そもそもそれ探すのうちに入らないし。しかもじゃあなって去っていってるし。
なんだったんだ、今のは。別に探してほしかったわけじゃないけど、ムカつく。
お腹が空いてきたので、ポケットに小銭が入っていることを確認し、ファーストフード店に入った。

目に入ってきたのは大量にハンバーガーを貪る人物。意外な人物といるな。

「ども、桃先輩、海堂先輩」
「んあ?越前じゃねーか!」
「よう」

物を飲み込んでからしゃべってください、ホント。海堂先輩はポテトをちびちび食べてた。

「一緒にどーだ?」
「…買ったらね」

ハンバーガーとポテトと飲み物(もちろんファンタ)を頼んだ。もっと食べたかったけど、なにせ持ち合わせの金額だから、そんなになかった。
誘われたとおり、桃先輩達の席に同席した。

「2人が一緒って休日でもあるんすね」
「なワケねぇだろ。こいつが課題やってねぇからだ」
「お前がだろ」
「んだと」
「周りに迷惑掛かるから他でやってください。ワンパターンのよく飽きないっすね」

そんなことを言うと二人はうっ…、みたいな顔をして黙った。いやきっと言っちゃいけなかったんだと思うけど、ついぽろっと。
取り敢えず助け船を出そう。

「あの何してたんすか?」
「あ、あぁ…。部長に今後の部活のあり方みたいな感じの課題が出てよ、それで昼飯食いながらやってたんだよ」
「面倒臭いっすね」
「ストレートだなぁ。お前は何してたんだ?」
「カルピンが見当たらなくて探してたんです。見ました?」

まぁ予想はしてたけどさ、海堂先輩が反応したよ。今まで興味無さげにしてたのにさ。反応されてもいないのはいないんだけど。

「猫だよな?見てねぇなぁ」
「海堂先輩は?」
「…見てねぇよ」
「どこいったんだろ。ま、食べ終わったことだし、探してくるっす。あ、一人で十分なんで。じゃ」

今にも、しょうがないからオレも付いていってやるよ、と言わんばかりの海堂先輩を制し、ファーストフード店を出た。
軽く海堂先輩へこんでたな。

それにしてもカルピンはどこに行ったんだろう。適当な道をほっつき歩いていたら、見覚えがある人がランニングしていた。
気付かないふりをしようか?いや、伊武さんみたいになるのは嫌だし、まあ軽く声を掛けておこう。

「…どうも」
「おう、何してんだ?」
「うちの猫探してんです」
「猫?猫ねぇ…」

あぁ、この人犬派だっけ。
犬派こと宍戸亮。犬派であって、猫が嫌いではないはず。ランニングをしていたなら見かけてないかな?

「ヒマラヤンなんすけど、見ました?」
「ヒマラヤン…。猫?あー、あぁ。いや、違うかな」
「すみません、どっちですか?」
「どっちがいい?」

どっちがいい?って聞かれても…。なにその変な選択肢。オレが見てないって言えば見てないの?
まぁ今んとこ唯一の手掛かりだから、YESって言っておこう。

「じゃあ、見たで」
「そうか。多分だけど、ジローのところかなぁ。それっぽいのは見たぜ」
「芥川さん?どこいんすか?」
「確か…、氷帝の中庭だった気がする」

当てになるのかなぁ。うーん…。

「あ、違ぇ。公園だ。そこの」

かなり違うよね。そこって本当そこだし。そこなら行ってもいいかな。氷帝は流石に嫌だったけど。

「どうもっす」
「おう。あ。いや、なんでもねぇ。じゃあな」

え、なに今の。
どんだけ優柔不断なんだよ。さっさと走って行っちゃうし。ホントなに?
半信半疑ながらその公園に行ってみる。

あぁ…、なんか分かった。

「ジロー、おーきーろー」
「お前は猫抱っこしたいだけやろ」
「なんでもいいから早く起こせ」

なんで跡部さんに、忍足さん、向日さんがいるんだろう。カルピンもいるし。芥川さんに抱っこされながら寝てる。
去りたい。なんでカルピンはそんなとこにいるんだよ…。

「ん?越前じゃねぇか」
「あー………、どうも」
「なんや今の間」
「丁度いい!ジロー起こすの手伝ってくれよ!」
「用あんの、その猫なんで」
「どう見てもジロー起こさなきゃ無理だろ」

うん、分かってる。でもね、あんたらと絡むのが嫌なんだよ、オレは。
しょうがないなぁ…。

「芥川さん、まる―…」
「マジマジっっ!?」

び、びっくりした…。いきなりガバッて起きだすんだもん。本当に寝てたの?しかもオレ、最後まで言ってないし。

「ってあれ?これ羊じゃない」
「猫だぜ。越前の」
「あー、ごめんだCー。てっきり羊かと思ってた」

全く悪気のない笑顔でカルピンを渡された。たぬきに間違えられるのならともかく、羊って…。どんな寝呆け方だよ。カルピンを抱っこすると、すごく暖かかった。

「えーと、カルピンがお世話に?なりました?」
「めっちゃ疑問系やなぁ」
「じゃ」

このまま帰ればなんの問題はないのだけど、簡単に帰れないくらい分かってたよ。だってこの人がいるんだからね。

「おい」
(やっぱり…)
「お前は金持ちでもなんでもねぇのにヒマラヤン飼ってんだな」

どう解釈しよう。
1。金持ちじゃないのにヒマラヤンなんて飼ってて図々しい奴だな。
2。庶民生活(あくまで跡部視線)なのに高級なヒマラヤン飼ってるなんてすごいね。
3。特になんも意味ねぇよ。

…3だな。

「うん。じゃ」
「うわー、果てしなく話無視されてっぞ」
「なんか変な選択肢が聞こえてきたような…?」
「てかほんま帰ってるで」
「どーんまーい、跡部」
「いや特になんの意味はねぇよ。そこまでオレは失礼じゃねぇ」
(インサイトか…)

気付けばもう夕方だし、せっかくの休みがカルピン探しで終わったな。やたら知り合いに会ったし疲れた。

「越前くーんっ」
「…犬を散歩してるの?犬に散歩されてんの?」

前からぱたぱたやって来たのは犬を散歩?している、壇太一…だっけ、。こっちは疲れてるのに、余計疲れるじゃん…。
犬に引っ張られているのを見ると、どちらかというと散歩させられてる様に見える。

「犬を散歩させてるです!越前くんは猫の散歩です?」
「猫は勝手に散歩するの」
「あ、そうですよね。よかったら一緒に散歩行きませんですか?きっと夕日とか綺麗ですよ!」
「んー、やだ。ばいばい」
「残念です。またです」

あっさりと承知し、そのままどちらか分からぬ散歩を続けた。
行ってもよかったけど、なぜかすごい悪寒がしたんだよね。だからこれは自分を守るため。

「さ、帰ろうカルピン」
「ほぁら〜」
「……今何か光った…?」
「くすっ、ばれちゃったね」

…なにやってんすか、不二先輩…。隠し撮りだなんて…。それストーカーだよ。犯罪になるよ。

「そんな怖い顔しないでよ。それに撮ったのは君じゃなくて猫だから」
「余計質が悪いっすよ」
「越前も撮ってほしかった?」
「結構です。じゃ帰るんで」

誰に対し相手をするのが面倒臭かったのでさっさと切り上げた。こんなときクールの性格でよかったとつくづく思う。いや、自分で言うのもなんだけどさ。

せっかくの休みはカルピンのせいで、休みなのに休みな感じがしなかった。

一番困ったのは、菜々子さんのお使いでスーパーに行ったら、亜久津さんとそのお母さんが無理矢理一緒に買い物をしていたのには、どうリアクションしていいのか分からなかった。


fin


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ