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一応努力はしてるんだけど
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天才の噂というのはやはりどこにでも流れるようで。もはや知らない人はいないというか知ってて当たり前レベルだとか。
むしろ弟子持っちゃってもいいんじゃね?とか微かに思ったりしてさ。鼻が高くなる。誉めてくれちゃってもいいんだぜ?

「ケーキ作ってください!」
「……はいぃ?」

ボレーがすごいです(キラキラ)とか、もう妙技とか天才的です(キラキラ)とかそういうのかと思いきや(いやぶっちゃけ言ってくれるのはジロくんだけなんだけど)、ケーキ?聞き間違いか?いや、ケーキという単語を聞き間違えるわけがない。

「なんつった?ケーキを作れ?」
「はい!噂で、丸井さんはケーキ作りがとても上手で、その上すごく美味しいと聞きました!」

いやまあこいつ、ボレープレイヤーじゃないけど。でもおかしくね?ボレーが上手く出来る秘訣はなんですかとかあるじゃん。

「あー、と、お前なんだっけ。不二の弟の…」
「裕太です!」
「スイーツ早食いだったら不二に勝てるんじゃないかって思ってる…」
「え!?それ、どこで!?」

柳のデータです。

「スイーツ好きには悪い奴はいねぇって分かってるけど、作ってやることは出来ねぇな」
「な、なんでですか!」

うわー、なんか本当に泣きそうだよ。罪悪感が襲うなぁ。でもちゃんとした理由があるから断るしかない。

「自分で食べるために作ってるから」
「そんなドヤ顔で…。ホールじゃなくてピースでいいのでお願いします!」
「えーだってお前ホール食べるだろぃ?」
「そ、そうですね、食べれますね…」
「というか一応立場的にオレは先輩なんだしわざわざ作ってやんなくてもいいんじゃん」
「そそ、そうですね…」

見るからにしょげてしまった。まあこんなに楽しみにしてくれてるんだから作り甲斐もありそうだし、ケーキの話題で食べたくなってきたのも事実。

「ふうん、そんなに楽しみにしてくれてんなら作ってやってもいいぜ?」
「ほ、本当ですか!ありがとうございますっ」
「たーだーし、条件がある!」
「出来るものであればやります!」

うん、いい返事だ。きっとどんな難題が出てくるか本心ははらはらしてんだろうなぁ。安心しろ、優しいから難しいことなんて言わねぇ。難しいことはちんぷんかんだ。

「よっしゃ、んじゃいくぜ。甘いもん食べても太んない秘訣を教えてくれ」
「……うん?」

最近また太ったらしく(まあ体重もちょっと…)幸村くんに笑顔で怒られたのだ。仁王にはピックだのぶーちゃんだの要は豚って言いたいんだろうって感じの嫌味を言われるは、赤也には丸井って名字なだけありますねーとか後輩とは思えない発言をしやがったし(真田は怒ったけどすんげぇやんわりだった。内容は否定しないってことか)。柳もブン太の太は太ると同じ漢字だなとか言うし。挙げ句幸村くんは、ブン太って"ん"を抜いたら豚だねって言うし(柳生とジャッカルが何も言わなかったのが救い)。パワハラだぜ?というかリンチだリンチ。

「お菓子は減らしたくねぇからよ、なんかコツってーの?ある?」
「太らないってことですよね?え、あの、それって普通にテニスしてれば大丈夫ですよね…?」

それで大丈夫なら苦労はしねぇよコノヤロー。

「あのな、世の中には体重が落ちやすい奴となかなか落ちない奴がいるんだぜ?脂肪が付きやすい付きにくいとかよ。みんながみんなそうじゃねぇんだよ。体質とかあんの。わ か る ?」
「あ、すみません!あの、それでしたら、練習メニューを増やしてもっと動くとか…」
「お前は生き殺しをするつもりか」
「す、すみません!」

あーあー、いーよなー。テニスをしてるだけで体型維持出来る奴。こっちなんてテニスしてもこれだぜ?
…ってことはテニスをしてなかったらもっと酷いってことか…。

「そうだ!観月さんが言ってました!多分、これが丸井さんにぴったりです」
「あー、野菜ダイエットとかタンパク質抜きダイエットとか、もはや減食とかは勘弁な」
「大丈夫です!食べたいものを食べるのが一番のダイエットですっ!」

いや確かに減らしたくないとは言ったけど。

「わりぃ、もうちょい説明追加」
「あ、ですよね。ええと、なんでも、食べたいものを我慢すると結構なストレスが溜まるみたいで、普通の食事でも余計な栄養を吸収して太ってしまうみたいです。好きなものをちゃんと食べればストレスも溜まらないし健康への近道だとか」

ふむふむふむ。
つまりこの場合はスイーツ断ちをすると余計に太るというからいっぱいスイーツを食べていいと。

「だよなーっ!体重減らしたくて我慢するのに、逆に増えちゃあ意味ねぇよな!よっし、とびっきり美味しいケーキ作ってやらぁ!」
「はい!お願いしますっ」

ということでケーキをいつもより大きめに作って二人で完食した。不二弟は随時美味しい美味しいって目をきらきらしながら言ってくれた。立海のみんなもこうだったら常に作り甲斐があるんだけどなぁ。

次の日に幸村くんに食べない方が太る!と告げたら、鼻で笑ってバカでしょって言われた。あそこまでバカにした目は初めて見たかもしれない。あと鼻で笑うってこういうことなんだなって思えるほど、見事な卑下した笑いでした。


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今回はちょっと書き方変えてみた。周りの描写は一切なしで、ブン太の心情おんりー。楽といっちゃ楽だな

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