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他人から見れば変人
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確か自分の記憶が正しければ、ここには練習試合をしに来たという名目の元、最新ファッションをチェックし尚且つお気に入りが見つかれば購入という目的でやってきたはずだった。

自由行動(という名の地獄のスパルタ特訓出張版)を抜け出す言い訳なんて何を言われても返せるように20パターン位考えてもいた。しかも何処からも情報が漏れないように自分の胸の内だけに秘めていたのに。

のに。のに、だ。
邪な考えを企んでいる奴がいる為自由行動は中止にし、代わりに他校との交流を深めましょうと来た。
敵である奴と交流を深めてどうする。只でさえ良い印象は持たれていないのに。

更に追い討ちを掛けるように、何故こいつとペアなのか。もしかして今日はとんでもなく運が悪いのかもしれない。ならほら、そんな中買い物をしたって欲しいものは売り切れとか結局取り寄せになるとかで無駄足を踏んだに違いない。そう考える方が精神衛生上よっぽどいい。

「なあなあ金髪〜、どこに向かってるん?わいはたこ焼き食べたいんやけど。なあ金髪〜。もしかしてお好み焼きの方がええ?でもわいはたこ焼き食べたいんやなぁ、なあ金髪〜」
「わんは金髪じゃなくて平古場って名前があるんだけど」
「あ、やっと標準語で話してくれるんやな!おおきに!やっといいしーそーつう?出来るな!」
「…意思疏通な」

正直出来る感じはしないが。
冒頭でも伝えたように、比嘉中は四天宝寺のご厚意により練習試合の為に大阪に滞在している。
今日は午前の内に練習が終わり、午後は自由に大阪観光(もちろん名前だけ)の予定だったのだが、急遽変わり、勝手に決められたペア又はグループで昼食を取り観光、案内をするというものになった。取り合えずよく分からないが、駅回りを適当にうろちょろしている。

ペアになったコイツ、遠山金太郎が言っていた通り、仲良くする気もなく、且つ計画が台無しになった苛立ちから、分からないと告げているのに関わらず、わざと方言を使いまくるという大人気の無い行動をしていた。

どこで培ったかは知らないが、無視するなら一方的に話しかけると宣言され、あまりの煩さにこちらが折れたのだ。これはきっと常日頃からやっていないと成せない技だ。誰か無視でもしてる仲間がいんのか?

「ヒラコバね!よろしゅうな。大阪に来たからにはたこ焼き食べないと、東京ツリー?とか、富士さんとか、ええと、やつはし…?とか、白熊さんの隣人だっけ?を見ない食べないのと同じやで!」

これは大阪人ならではのコミュニケーションでツッコミを入れろという無茶ぶりなのだろうか。しかし本人は気にすることなく、美味しいお店はこっちと張り切り先陣を切った。

裕次郎張りのアホ発見。

土地勘も無いわけだから、まずは大人しく後ろを付いていく。なんだか周りはごちゃごちゃとしており、音楽も結構な音量であっちゃこっちゃ流れている。流石大阪といったところか。いや、自分の身近でもそういう場所はあるが。

「ここがね、わいのお気に入りのお店」

案内された所は先程いた場所から離れておらず、持帰り用カウンターと店内とで構成されていた。店内ではたこ焼きの他お好み焼きや焼きそばと定番のものも食べることも出来るようだ。遠山は迷わず店内に入り、後を追う形を取った。外見も内装も木をベースにしていて、綺麗で不思議と落ち着く雰囲気があった。

席へと案内され遠山は直ぐ様、いつもの!と注文をし、取り合えずたこ焼きとだけ注文をした。

「あんな、あんな、気になってたんやけど、ヒラコバの仲間にひょろろ〜ってしててにょろろ〜てにゅ〜んってしてる人いるやん」
「ひょろ…、…寛ね。知念寛」
「チネン?うん、チネン。チネンってもしかしてなんかの動物さんの化身だったりする?」
「は?化身?」
「ちゃう?じゃあ魔術師さん?」

これは、試されてるのか?チームメイトである彼をいかにフォローするかという。
それともこれも大阪風親睦なのだろうか。

……いや絶対どちらでもない。この馬鹿で純粋の目は、本気です、という意味だ。

「普通の人ばぁよ」
「え、嘘だぁ。ユウジがな、あれは千歳と同じ人種だって」
「千歳?あぁ、一番背が高くてブロッコリーな」
「…ぶろっこりー?」
「髪が」
「あれはな、森の妖精さんと仲良くなる為にあーゆー髪型してんやで。なんでもあれで妖精さんの声を聞いてるみたいやで」
「へ、へぇ…」

森の妖精さん…。裕次郎でも言わないぞ、きっと。多分、でっかい木程度だと、思う、うん。

たこ焼きが運ばれてきて、遠山は待ってましたと言わんばかりに直ぐ様食べ始めた。

「チネンのあの白い髪も海の妖精さんとお話するため?」
「いや、間違って染められたというか」
「んー、じゃあ、チネンって、どういう人なん?」
「確かにキムジナーとかすげぇ信じてそうだけど、妹想いのお兄ちゃん…、あ、ちょっと変わった沖縄好き?うん、地元愛が人一倍強くて背が高い奴」
「え、それ普通の人やん」
「だから、普通の人だって」

いやまあ見た目があれだから分かんなくもないけど。
でもいつだったか、ハイビスカスを種を蒔いて育てて、花を咲かせた時は感極まりないとばかりに泣いてたっけ。
なら。

「付け足すなら感情が顔に出やすい、とか」
「あれが」
「うん」
「……そうか!分かったで。なんや、失礼なこと聞いたなぁ。堪忍な」
「…はい?」

早くもたこ焼きを食べ終わった金太郎は、口周りを拭いて周りを見渡し、声を潜めながら言った。

「チネンは、忍者なんやな?」
「は?」
「だから、ほんまの事なんて言えへんよな…」
「え」
「やっぱ妖精さんを守るためには影で活躍せなあかんもんなぁ」
「いや」
「忍者ってばれたらあかんもんやし情報も極秘やもんなぁ」
「あの」
「大丈夫!わいなんも聞いてへんよ!」
「だから」
「誰にも話せない悩みあったら、同じ任務を背負ってる千歳にするとええで!」
「その」
「チネンによろしゅ〜」
「……」

悪ぃ、知念。知念は忍者説ってのを止めることが出来なかったぜ。四天からなんか言われたら、オレのせいだわ。

心の中で手を合わせ、届くわけないが謝罪を述べた。

絶対に大阪の人とは気が合わないと思ったが、晩御飯の席で一緒になった謙也と美容の話で盛り上がっていた。

知念はというと、案の定遠山に問い詰められていたが、見事に話が噛み合わない話をしていた。

ふと裕次郎がぼそりと呟いた。

「あ〜ぁ〜、ユニバーサル行きたかったばぁ…」

邪な計画を立てたのはお前かああぁぁぁ!どんなに頑張ってもお前はおバカさんなんだから永四郎にバレるに決まってんだろうが!

同室の裕次郎と夜ケンカをしたのは云うまでもない。
次の日仲良く美味しくゴーヤをいただきました。

―――――――――――
相互記念に書かせていただきました。空海様のみお持帰り出来ます。
何となく、凛ちゃんって流されやすそう。他人に執着しなそうだから、どういう人?っていう話題は苦手そうなイメージ。


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