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□拍手・甲斐
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髪、服、肌、爪…。
よし、全部バッチリ。変に乱れてるところはないけど、念入りにチェックしてしまう。
それもそのはず。
裕次郎と二人っきりになれるチャンスがあるのだ。これを告らずに、なにをしろというのだ。
なんて伝えるか、10回いや30回…24回ぐらいかもしれない、かなり考えた。
どストレートに言うか、遠回しに言ってみるか、はたまたおしゃれに着飾ってみるか。
でもお相手はあの裕次郎だ。どんなに頑張って言っても、彼の前では意味を為さない思うので、最初っからどストレートで伝えることにした。
伝わるかもしれないけど、どうしても私の中の裕次郎はおバカというイメージが強すぎて、伝わらないと思ってしまうのだ。
というか、OKもらえるかな…。いや、でも覚悟は出来てる。結果より、伝えたか伝えないかの方が大切だよね。
あー…緊張してきた。
とうとう二人っきりになる時間が来た。
裕次郎はめんどくさーとか言ってたけど、まぁいっかとか独り言をぶつぶつ言っていた。
なんで二人っきりかって?数学の時間たまたま裕次郎と私が居眠りしてて、先生にバレた挙げ句、問題が解けなかったので、ノートとプリントを集めて番号順にして、放課後に先生の元へ持っていかなければならないからだ。
私にとってはおいしいチャンスだけど。しかしどうやって切り出そう…。
「やーは並べ終わった?」
「え!?あ、うん」
「じゃあせんこーのとこにいちゅんばぁよ」
「う、うん…」
き、切り出せない…!
しょうがないから職員室の帰りにしよう!そうしよう!
とか思ったのも束の間。
もう教室への帰り道。チャンスなし…。
「それにしてもやーが居眠りなんてぬーかあったの?」
「え?あーと、考え事してたら、眠くなったというか…」
これってチャンス?
「ふーん」
「そうだ、聞いて!私ね、裕次郎の事が好きなの!」
どストレートに言ったぞ!さぁ!結果よ!どぉーんと来い!!
「あい?わんもやーの事しちゅんさ」
「本当っ!?」
「うん。いぐなのくせにサバサバしてるし、ぬーか、豪快?って感じばぁ」
「へ」
「あ、わんこれから部活だから。またあちゃーなー」
「え」
片手をシュタッと上げて、今まで見たことがないぐらいの爽やかな笑顔で去っていく裕次郎。
え?ええ?ええぇっ!?
ちょっと純粋ボーイ君!
その「好き」じゃない!
お題:ひよこ屋