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無理なら公用語を喋ろう
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「ハロウィーン…」

って、確か外国のお盆だって白石が言っていた。エイサーは沖縄のお盆だって謙也が言っていた。

お盆は花火が上がるって千歳が言ってた。エイサーは踊るって小春が言ってた。ハロウィンはお菓子が貰えるって財前が言ってた。

花火上がって、踊って、お菓子が貰えるのないのって聞いたら、バカかってユウジに言われた。
それは夏祭りだって銀が言ってた。

ハロウィンは、仮装して良い子にお菓子をあげるんだって、仁王が言ってた気がする。
楽しみだねって言ったら、それは外国だけで日本ではしないってコシマエが言ってた。
ちゃんと良い子で信じてれば貰えるでしょって言ったら、それはサンタクロースだって切原に言われた。
サンタさんがいてかぼちゃさんのおばけがいないのおかしいって言ったら、君は本当に素直で馬鹿だねって幸村に言われた。

「で?」
「ん?で?んで?おでこ?」
「……翻訳者どこだ。つーか保護者の白石はどこだ」
「おらへんよ、どっか行った。なぁなぁ跡部〜」

心なしかイライラしているような気がするけど、絶対気のせい。だってそうなる理由ないもん。

今ここの部屋にはわいと跡部しかいない。ちなみに跡部の寛ぎのお部屋。他校のテニス部レギュラー、跡部ん家にテニスついでにお遊び中。

「なぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁ……穴?」
「ええい、うるさい!日本語を喋ろ。日本語が無理なら他の言葉を喋れ。ただし遠山金太郎語だけは使うな!」
「え?テスト?ええと、つまり言葉?喋る…シャベル?」
「………知らねぇよ」
「りしぃらっせここ」
「ポルトガル語だろ」
「どぅばい!どぅばい!」
「なんで日本語解んねぇのに外語は解るんだ」
「…外語?囲碁……。パンダ!合ってる?」
「なにがだよ!俺様になんの用だ」

おかしい。なんか、怒ってる。あれれ。ちゃんと質問に答えただけなんだけどな。

「あんなーだからさっきからずぅーっと言ってると思うんやけどね、つまりわいが言いたいのはしら」
「俺様が悪かった。用件、いや、核心部だけ…、どうしたいかそれだけを言え」
「ハロウィン作って」
「あるじゃねぇか」
「ううん、ない。だから、作って」
「…誰かお前の話が解る奴連れてこい。そしたら聞いてやる」

何故だか疲れた、と多少項垂れる跡部。ただ普通に話しかけてるだけなのに。誰かを連れてこないと聞いてくれないようなので、まあ誰か近くの人を探しに行こう。

豪華な扉を開けて、近くに誰かいないか探してみる。ここから離れたら戻れそうもないから。
周り…。白石いないもんなぁ…。四天のみんながいたら苦労はしないんだけど。

「あ」
「ん?」
「謙也の従兄弟の白石に続く、いやそれ以上の変態やん!」
「なんやそれ。謙也が言ってたん?」
「変態には気を付けろって」
「その変態って、オレの固有名詞を指してるん?」
「こゆーめーし?めーし?名刺?飯?」
「あかん、話が全く見えへんやけど」

謙也の従兄弟も何故だか困ったという顔をし始めた。あれれ、もしかして話が通じてない?四天のみんなだと通じるんだけどな…。

「跡部にな、わいの話がわかる奴連れてこいって、近くで探してたん」
「おん、そうか。頑張れや」
「で、謙也の従兄弟見つけた」
「おん」
「うん」
「…………」
「…………」

あれ、会話終了?

「…?……。???」
「オレ、自分の話解らへんから他探してや」
「えー。お前、ほんまは大阪人やないな!」
「なんでそないなんかな…。お、救世主発見や」
「侑士と金ちゃんなんて珍しい組み合わせやなぁ」

救世主と呼ばれたのは謙也。様子から察するに何か用事があって来たわけではなさそうだ。

「なんしてるん?」
「自分の後輩構ってたんや。言ってることよお解らへんがな」
「ふうん?金ちゃん、どした?」
「跡部にな、ハロウィン言って、連れてこいなって、従兄弟と絡んでた」
「へえ、やっぱそういうの、白石がええんちゃう?」
「え、今ので解ったん?」
「おん」

ほら、謙也にはわかるんだよ。わかんない方がおかしいの。そういえば跡部は頭良いんだよね。なのにわいの言ってることわかんないって…。ほんとはアホなんじゃない?

「謙也じゃダメなん?」
「いや、あんま跡部と喋ったことないし…。部長同士、ナルシスト同士の方がええやん?」
「ナルシスト…?あ、白石」
「浪速のスピードスターやあぁああぁぁっ!」

と言って、謙也は後ろを振り向きもしないで猛ダッシュで去っていった。いや、多分白石に聞こえてないと思うけど。

「どうも、侑士くん」
「いつも謙也が世話なっとるな」
「謙也どうしたん?」
「さあ?火急の用事とか」
「ふうん。で、金ちゃんと連んでなんしてるん?珍しい」
「あんな白石、跡部にハロウィン頼んでわかるの連れてこいって」
「え、それ、オレなん?」
(やっぱ伝わるんや…)
「まあええか。てなわけで、ちょいと跡部に会ってくるな」
「頑張れや」
「?おう」

やっぱり話が早い。みんなね、わいの話わかんないなんておかしいよ。きっとみんなおバカさんなんだ。
当初の予定通り(?)白石を探し当てることが出来たので、先程までいた部屋に戻る。
ノックして入れば跡部と目が合い、あからさまに嫌そうな顔をした。

「白石か…」
「まいど。で、オレなにすればええん?」
「こいつが言ってることを翻訳しろ」
「翻訳…?わかった。じゃあ金ちゃん、跡部に用件話してみい」
「おん!ハロウィンて最初よおわからへんかったんやけど、白石とか謙也とかその他もろもろの人にたくさん教えてもらってな、ごっつおもろそうやな思うて、本場にいたっちゅーコシマエにも嫌々色々聞いたんやけどね、ここが一番びっくりなんやけど、日本では小さなイベントって感じで、クリスマスみたいに良い子良い子してれば貰えるってわけやなくて、そんなことやったら不審者になってまうようで、名前だけでお菓子貰えへんなんておかしいやろて、どないしたらええんかみんなに聞いて回ったんやけど、飾りつけだけやってイベントはやらへん言いよって、なんそれめっちゃ意味ないやんかて思うんやけど、もうちょいとこうさ、なんとかならへんの?」
「………つまりなんだ、白石」
「仮装パーティーしたいんやって」
「…そうか」

さすが白石。わいが言いたいことを簡潔に言ってくれた。跡部はなにをどうしたらそういう解釈になるのだろうとか考えてる様だけど、そのまんまじゃん。

「遠山、お前現文勉強しやがれ。少なくとも人とコミュニケーション取れるぐらいまではな」
「現文?現実…文化?」
「ちゃうちゃう、現代文。金ちゃんは今は国語総合っちゅー科目や」
「ふうん…、でもわい困ってへんよ」
「せやなぁ、でもほら、跡部くんにお願いしてんやから、言われたことちゃんと出来へんとやってもらえんで」
「そらあかんわ」

いやむしろ跡部がわいの言葉をわかるようになればいいのに。あれ、四天のみんながわかるって方がおかしいの?

「跡部、わい日本語喋ってない?」
「いや日本語だが日本語じゃねぇ」
「あ!なぞなぞ?」
「この時点でコミュニケーションが取れないってどういうことだ。異常だぞ」
「アブノーマル!合ってる?」
「あぁ、お前の頭がな。白石」

あれれ、すぐに会話終了させられる。もしかして跡部、わいとあんまり話したくないのかな。わいは話したいけどな。

「これ、問題だぜ」
「うーん、こっちでは然程問題やないんやけどな」
「いやそれどうなの。無駄が嫌いで完璧なお前がこれを許していいのかよ。全くの正反対じゃないか」
「努力はしたんやけどなぁ。これでもよくなったんやで」
「知らねぇよ」
「よし、決めたで。ハロウィンパーティーするから、金ちゃんの勉強と面倒ちょい見てやってな。な、金ちゃん」
「?うん」
「いや、逆だよな、これ。なんでお前が主催者面してんだよ」

よくわからないけど、とりあえずパーティーは出来るってことだよね。あれ、白石何て言った?

「勉強?」
「せやで、跡部だけだと負担が大きいやろうから、他に問題児を抱えてる幸村くんと真田くん、あと手塚くん。他誰いいかなぁ、木手くん辺りにも頼むよ。今から頑張って」
「え、わい、中学生に見えん中学生に勉強を教えてもらうん?無理、無理無理」
「ご褒美にパーティーとたこ焼き1週間とコシマエくんとの試合プレゼントや」
「ほんま?しゃーないな、やったるわ」
「跡部が」
「大阪人無礼だな。しかもなに丸井みたいなこと言ってんだ。しかも全部他力本願じゃねぇか」
「頼んだで、跡部」
「少しは人の話聞こうか」

勉強だなんて負け組だけど、パーティーとたこ焼きとなんたってコシマエとの試合、このためなら嫌いなものも泣く泣く、いやしょうがなく、いやいや特別にやってあげようじゃないか。

と、意気込んだものの、10分後で後悔をしたのは言うまでもないよね。
白石にちゃんと教えてもらおうと心底思いました。


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自分でもどんな話にしたかったかわからない


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