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伝える:比嘉
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「日頃世話になってる人に感謝の気持ちを伝えましょう?」
「…裕次郎にはひっちーあびてぃるばぁ。裕次郎からも言われちょるし」
「やっぱこの場合…永四郎?」

いつもゴーヤに世話になってますって?それこそなくないか?感謝なんて…。

何故こんなことになっているのか。ここ沖縄では他人との繋がりをとても大切にする場所だ。いちゃりばちょーでーという言葉があるぐらいに。それはとても素敵なことだし、これからも大切にしていきたいものだ。

そんなものだから、クラス全体で、普段お世話になっている友達に感謝の気持ちを伝えましょう、という課題が出たのだ。

その友達の答えが出たのが永四郎だった。

「ちょっと、うん、ないわ」
「凛、これはチャンスだばぁ!よくよく考えればあんまり永四郎に感謝をあびてない気ぃすんもん」
「えー…。それ、言ったらゴーヤ減ったりする?」
「……お礼に増えそうばぁ…」

なんで感謝したら、お礼に嫌いなもんを渡されなきゃなんないんだ。こっちがかなり損ではないか。

「でも、ほら、大切なのは気持ちやし。ここは素直にあびるばぁ!」
「やーのポジティブほしいわ…」

でも確かにそれは大切な事だよな。当たり前の事が当たり前に出来る人間になりたい。しょうがない。

「素直にいつもゴーヤにふぇーって言うか」
「凛、凛、それ、嫌味」
「じゃ、ぬーに感謝?」
「えっと…、部長にふぇーって」
「な、無理してやんなくていんじゃね?気持ちが大切なんだろ?なら、くぬ気持ちがちゃんとあんならいいじゃん」
「…そかもね。なら凛、ひっちーでーじにふぇー!いちどぅしなっていーりきーさぁ!」
「わんもいつもにふぇー。永四郎は心の中でにふぇーでーびる。本人前ではあびれんが、でーじ感謝してます。じゅんに」
「うん。本心だもんな。いつもにふぇー!よし、課題終了ばぁ!」
「ほお、それはよかったですね」

この時二人揃って同じリアクションをとったのは言うまでもない。背後から木手が話し掛けてきた。
ギギギと効果音が付きそうなぐらい、固い首を回し、甲斐は引きつりながら笑った。

「えーしろー…。はは、ぬー?」
「不本意ながらではありますが、きちんとあなた方の気持ちを聞きましたよ」
「おおお礼にゴーヤはいらんからなっ!絶対っ!あぶそりてぃーっ!」
「それは残念です。じゃあお礼に」
「聞いてました?」
「放課後、みんなでおやつを食べに行きましょう。かき氷も佐世保バーガーもありますよ」

木手には珍しく、少し微笑み、そして去っていった。
二人は目を合わせ、はにかんで笑った。
木手の、感謝の気持ち。

やっぱり言葉にして気持ちを伝えるのはとても、大切な事。
近くにいてくれる内に、これからもたくさん伝えていこう。


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震災絡みで、テーマは伝えるシリーズ


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