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□夕日色涙
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どうしてこんなにも涙が出るのだろう。
解っていたはず、彼女が彼を好いていた事くらい。
解っていたはず、彼もまた彼女を好いていた事くらい。


なのにどうしてこんなに、悔しいのだろう。



「っふ……う、……」
「………」

傍でただ頭を撫でてくれる彼にかける言葉さえ見つからない。
ありがとう、ごめんなさいと言えるほど、私の気持ちは落ち着いてない。


「朝比奈さん、大丈夫ですか?」
「ひぇ……ぁ、こいずみく……ん…」


顔をあげればいつものように、いつもより優しく、笑ってくれた。


「………ごめ、な、さっ……」
「謝らなくて、良いですから、泣きたい時は泣いてください」
「……ぅ……ん……」


優しいね、ありがとう。
本当に、ありがとう。古泉くん。






いくらか、時間が経った。部室の窓から射していた西日は本格的に朱く染まって、わたしの涙も徐々に渇いてきた。



「………落ち着きました?」
「はい、ありがとう、ごめんなさい」

す、と彼から差し出されたハンカチ。


「え?」
「涙、まだ、出てますよ」

目元を指差しながら笑った。


「あ、うわ、わたしっ、あ、大丈夫です、自分のハンカチ、あります、」
「………、」


目下に白い布の存在を感じた直後、左目に柔らかい感触。


「あ、すみ、ません」


すると彼はまた笑った。本当に笑顔が似合う人。

何も言わないで、ただ笑顔だけをくれる。
それが、うれしくて、また涙が出そう。





お互い、何も喋らないまま時間が過ぎて、私の思考は、やはりあの二人の関係だけを考えてしまう。



(涼宮さん、うれしそうだった。キョンくんも、)


それを嫉んでしまう、私はなんて醜いの。





「――――僕じゃ、だめですか?」






「え?」



突然聞こえた凛とした優しい声。
それは隣に座る彼のもの。



彼は、沈みゆく日を遠い目で見据え、真面目な顔をしていた。



「古泉、くん、」

「………すみません、気が動転しているようです。今の事は、忘れてください」

「い、え、あの、」

何を答えたらいいの、わたし。


さっと立ち上がり、またにこりと笑う彼。




「さ、行きましょう、もう日が暮れます」


手を差し延べてくれたその、彼が、ああもしあの人だったら、ううん、でも。



「はい」




ごめんなさい、わたしは醜い人間です。














END












古泉→みくる→キョン⇔ハルヒ









 

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