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□季節に罪を被せた
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空気が澄んでいる。夏に比べて冬の空気は凜としていて気持ちが良い。肌を刺す寒さも、淀んだ心を洗い流すにはぴったりだ。
がっちりしている制服も、この季節ならば心地よい熱で覆われる。つまり俺は冬が結構好きだった。生まれは夏だが。

息を吐けば白い気体が宙を舞った。それは嫌いな上司の煙草の煙を彷彿とさせてカンに障ったが風情というものを考えればその白も良いものだろう。

なんて。ありえない、こんなことを考えるとは。らしくない。
夏でも冬でも俺は生きてて、仕事をして、たまに喧嘩して、何も変わらない、同じ事の繰り返し。変化なんて望んじゃいない。変化が進化だとは限らないから。


「サド、」
「…何」

斜め後ろから声をかけられ首だけを動かせば居たのは好敵手。短いスカート履いて、寒くねーのかよこいつ。

「寒いアル」
「ふーん」
「なんか奢れ」
「却下」

首を元の位置に戻して右足を前に出す。関わる必要のない相手に長い話をしていても意味はないから。関われば妙な独占欲に襲われる。まさかあんなガキに欲が湧くとは思ってなかった。

「健気な女の子見捨てるのかヨ」
「健気?ゴリラのくせに」
「ゴリラ違う」
「つかついてくんなストーカーか」

俯いたまま女はついてきた。俺と同じ歩調で。少しだけ遅れて。可愛いとは感じない。それでも手に入れたいと感じる。心臓の奥が少しだけ痛む。歪む感情には慣れたはずだったのに。

「……チャイナ」
「なにアル」
「欲しい」
「は?」


ただとにかく欲しかった。とくに何をするわけでもない、それでも言ってしまった。息が白い。手がかじかむ。そんなことどうでもいい。ただ、側に居てほしくて、腕を強く掴んでいた。



「サド、?」
「俺、」

何も言わない。何も言えない。
華奢な細く白い腕に跡がつくくらい強く握りしめて、。何にもならない。何にもなれない。
それでも澄んだ空気のなか放置された俺に逃げ場はない。このまま抱きしめてキスしてやっても、多分俺には意味のない。


「、俺…」
「…?」




季節にを被せた





END






覇埜さまに捧げます
冬の沖神…?





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