文章
□それは
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別に、そんなことされたって。
私は一人でもどうにかできた。助けなんて必要なかった。なのにアイツは勝手に私を助けやがった。
地面に打ち付けられた背中がまだじんじんする。どうせなら着地のことまで考えて助けろよと言いたい。
つい三十秒程前、私には永遠に感じるくらい前、発せられた言葉が頭から離れない。
背中の痛みと同じ、いやそれ以上に脳内に響き渡る。
鼓動が速まる。
今隣にいるそいつと目を合わせることも出来ない。出来るだけ平常心、早口で会話する。
(その娘、って言われた)
ああ目の前にいる敵に集中出来ない。
身体が命令を聞かない。さっきから上がるだけの熱はどこからも発散されないままでただ体温だけを上昇させる。あ、今私すっ飛ばされた。
あれ、あそこにいんの、
「何やってんでィ」
「……、」
目を合わせてしまった。
あーあ、もう、死にそう。
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