オリジナル小説

□月と星が泣く夜
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ここはとある病院の病室。
そこには最近入院した幼い兄妹がいた。
時刻は午前1時。普通の子供ならすでに夢の中だ。
でも1人だけ夢に入らず、現実に残っている子供がいた…

「どうしたの?眠れないの?お兄さんはとっくに寝てるわよ」

見回り中の看護婦さんが病室に入ってきた。
病室には兄妹の妹の方が起きており窓の外をずっと眺めていた。

「あら、綺麗な満月ね…」

妹の側まで近づいて看護婦さんは呟いた。
今日は満月。それは太陽とは違う神秘的な光を放っていた。
そして月の周りには数え切れない程の星々が輝いていた。

「……………………」

妹はただただ満月と星々を眺めていた。そして…
泣いていた…
でも妹は自分が泣いていることを分かってないようだった。

「満月…綺麗だね…」

泣いていることはあえて言わずに看護婦さんは話しかけた。
するとさっきまで黙っていた妹がそっと口を開いてこう言った。

「お月様とお星様が泣いてる…」

「え?…」

妹が口にした言葉に看護婦さんは驚いた。
妹は続けて口を開いた。

「泣いてる…悲しそう…」

「どうしてお月様は泣いてるの?」

看護婦は疑問をぶつけた。
すると妹は悲しそうに

「だれも見てくれないんだって…夜を照らしているのは自分なのに…」

「………………………………」

看護婦さんは押し黙った。
確かにここ最近月や星を見ていない。
それどころか頭の中に入ってなかった。
そして妹が少しほほえんで言った。

「だから…ボクが見てるから大丈夫って言ったんだ。」

「そっか…お月様もお星様もきっと喜んでるわ。」

「そうかな…そうだといい
な…」

妹はそう呟いた。
その後見た月と星々はさっきよりも輝いて見えた。

数週間がたったある日の午後…

兄妹が退院することになった。

「よかったわね退院できて…」

「うん!!一緒にお月様とお星様見てくれてありがとう。」

「どういたしまして…」

向こうで妹を呼ぶ声が聞こえる。
親の出発の用意ができたようだ。

「じゃあね!!」

妹は親の元へ走り出して行った。
看護婦さんは空を見上げた。
空にはうっすらと月が見えていた。
看護婦さんには月も兄妹の退院を喜んでいるかのように見えた…
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