‐Novel(U)‐

□願わくば
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死んでしまえと誰かが言った
(あれはまだ咲いているだろうか)
何処から聞こえてるのだろう
(問うても応える者はなく)
気付いた時には手がどろりと濡れていて、思わず笑った
(既に枯れているのだろう)




――取り返し、つかない。















「ふふ 僕に会いに来たの?」
「おやおや、これはこれはイヴァンさん… 自意識過剰もいいところです」


まだこんなに雪が積もっているというのに、君は軍服一枚で現れる。

自意識過剰ね、

僕がそう呟こうとすると、雪みたいに白くて細い、僕なんかと比べものにならないくらいの指がこの頬に触れる


「寒くない?」
「ちっとも」


その瞳は虚ろでありながらも何か惹きつけるものを帯びていた

それは多分………



「マフラーくらいなら貸してあげるよ」








僕の心





瞬間、柔らかい感触を感じ、僕も彼の頬に手を添えた
熱い吐息とキミが心地良すぎて、もっともっと欲しくなる。ねぇ、熱くて熱くて死んじゃうよ









(………馬鹿らしい)





彼も温もりも感触も…

全てが灰になって朽ちていく。 全ては虚無に帰り、世界は濁る



「君はもういないのにね」



サァ――… と僕の知らない風が吹いて、さっき彼が触れていた頬を撫でて行った


(あれはいつかの……)
「花だ」


雪を被りながら生きていた
あの時の小さな花

春みたいな風は次にその花を愛でていき、そよと立派な葉が僕に手を振った



ねぇ… 見ないでよ



その花の後ろに、キミは立つ

虚ろな目をして瞳を覗いてくるのはやめて


どろりと花が朽ちていく


「イヴァン…さ、ん……」


やめてやめて
僕の名を呼ぶのはキミじゃない だって、



















僕が殺したんだもん



















「死んでしまえ」









言っても言ってもキミは消えない

どんどんどんどん今にも泣き出しそうな悲しい顔をして僕を責めていく



「呪ってるんでしょ? 僕が殺したがら怨んでるんでしょ!?」



じわっと汗ばんだ気がして見下ろす


手が… 真っ赤に――…?






「ふふ… あっはははははは!!

「イヴァンさん……」







キミは死んだ!


(花など最初から無かった)
なのに僕を追い詰める!!
(なのに一体どうして見えたのか)





僕に見えるものなんて…


死んでしまえばいいんだ!!!




だけど、














「許されるなら……… 」





許されるなら、二つとも手に入れたかった




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