‐Novel(U)‐

□fratello
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「ちょっと出掛けて来ただけやん…! そらまた帰る時間も遅れた俺が悪い… せやかて実家帰るなんてあんまりとちゃう?!」


切羽詰まった声は、兄ちゃんに届いてるのかな

どっちにしても……



ガチャッ!!


「フェ… フェリちゃん?」



今兄ちゃんに合わす気なんて、更々無いけど


「帰って」


こんなにしたアントーニョ兄ちゃんを… 会わせたくない


「え…」




「聞こえない? 帰って、って…言ったの」




「フェリ…ちゃん………」




パタン

ドアを背中にして、ゆっくりと指を動かした瞬間 小さな音が聞こえた

カチャ


少し間をおいて溜め息が出る
自己嫌悪、目を閉じて自分の前髪に触れる

ひやりとした空気を再び感じて兄ちゃんを布団へ連れて行こう
そう思いながら胸元のシャツを一度掴む …まだ少し痛い


「フェリシアーノ… 誰かきたのか……?」


弱々しく嗄れたその声のする方向に笑ってみせると兄ちゃんは開いたドアのそこまできていた。


「ううん来てないよ〜 ねぇ兄ちゃん、今日は一緒に寝よ〜」

「はれ? おまえじゃがいもの家じゃ……」


フェリシアーノはついに眉を寄せてロヴィの手をひいた





「兄ちゃん、はやくしないと風邪引くよ」


















布団に入るなり深い眠りにつく兄の顔を見る

頬には涙の筋…



「俺は… 役に、たてないのかな」


そう、
確かあの日も泣いていた
家の中にいないと思ったら姿は庭にあって…白爪草をその大きな手で握り締め、まるで豪雨を怖がる子供みたいに

青空の下で顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた


俺はたまたまその姿を見つけて… 胸が痛くなったの

それを思い出して、さっき兄ちゃんからまわってきた胸の痛みがまた強くなる




「兄ちゃん…」




「アントーニョ……」



どうして、アントーニョ兄ちゃんなんだろう

"コレ"だって、きっと兄ちゃんは帰りが遅くなったことに嫌気がさしたんじゃなくて… 他の人と一緒にいるのが嫌なのに

アントーニョ兄ちゃんはきづかない


そして どうして… ?




兄ちゃんが今度は俺の名前を呟いて 頬を緩ませた


「ばーか弟フェリシアーノ…」




痛い


痛いね兄ちゃん



兄ちゃんがアントーニョ兄ちゃんを想う辛さは
俺が兄ちゃんを想う辛さと一緒 だからわかるんだ


でもね

だからね、俺には支えになるルートがいるんだよ


そのルートを兄ちゃんに否定されると俺はどうしたらいいかわからなくなるよ



でもね、兄ちゃんにこの想いを隠す代わりにね

兄ちゃんが涙を流したいときは俺を頼ってね 俺はそれだけを待つから








兄ちゃんの中の俺の居場所はそこだけでいいから





約束… だよ、兄ちゃん。









胸の痛みがすぅっと引いて涼しげな空気が頬でぴりっと弾けた


「俺ってつくづくずるい奴だな〜」


明日になったら1日は兄ちゃんと一緒にいよう

それでルートの良いとこたーくさん教えてあげて…もしかしたら兄ちゃんもルートのことちょっとは好きになってくれるかな?




「なんて、ね――……」
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