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□リヒト




 収拾がつかないくらいの賑やかさがいい。息をつけない程の忙しさがいい。この手はいつも、俺を喧騒から連れ出してしまうけど。

「やあロシア! 誘ってもいないのによく来たね!」
「なんだいフランスー、昼間っから酔ってるのかい?」
「ああ、そうだドイツ、こないだの車のことなんだけど……」
「日本! 借りたゲーム面白かったよ! でもボスがどうしても倒せないんだ」
「――――アメリカ?」
「なんだいイギリス!、」
「その、大丈夫か? お前」
「は、」
「何か顔色悪いぞ」

 ああそうやって君はまた俺の手をとって、

「ははは! 余計なお世話だよ!」

 俺を引っぱり上げていく。ごまかしのきかない陸上へと。
 やめてくれ、やめてくれよ俺は(まだここにいたいんだよ)暗い深い海の底に。泡沫に消える喧騒の中に。(俺はまだ)

「なっ、俺はなあ! お前のこと心配して」
「…………、っ」
「あ、アメリカ?」

(……余計なお世話だよ)

 君がいなければ君さえいなければ俺はまだこの海の中にいたはずなんだ。
輝くような太陽もそうして笑った君の手も、俺の肌には熱過ぎた。






"リヒト"






(けれどああ、世界は美しい)






 


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