sky/monster

□Chapter.0 take off
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…………。
……確かめるまでもなく、母さんは死んでいた。優しい人だった。家事の合間に僕に本を読み聞かせてくれた。僕の口癖は、母さんと結婚する、だったし、母さんの口癖は、生まれ変わったらアルバと結婚する、だった。生まれ変わる前に結婚してもらおうと引いたその手……。僕は、僕を助けるために伸ばされたその白い手が、床で、僕に助けを求めているみたいに感じて、怖かった。
頭の奥が痺れていた。現実を認めることができなかった。でも、カメラで切り取ることができれば、それは現実だ。
震える手。
覗き窓の隅にたまった埃。
白い、手。
……シャッタ。
あぁ。
その時。
頭上を、
屋根の上を、
雷のような爆音と
影がよぎった。
咄嗟に、僕は瓦礫の山をかき分け、家から飛び出す。外から見ると家は見事に崩れていた。見慣れた村に人影はない。ただ、青い空。村の外に広がる草原や雲が輝いて見える。
再び、雷のような音。
遠い。……近づいてくる。
僕は音の方へカメラを向けた。
はじめ、それは点だった。
雲の下。2つ。
奥の1つはリオレウス。
そして……。
爆音のもとは。
十字架だった。
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