sky/monster

□Chapter.0 take off
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それは、ただの好奇心だったのかもしれない。鼻っ柱の強い報道者の性根だったのかもしれない。
いずれにせよ、僕は今よりずっと幼かった。
「飛竜が来たわ。逃げるのよ」
母さんは僕の手をとった。
「父さんは?」僕はきく。できるだけ素朴に。それでいて不安げに。
それは王手への布石。
「あの人はハンターです。だから……」
母さんの瞳と握力が緩んだその瞬間、僕は母さんの手を振りほどいていた。
「待ちなさい! アルバ!」
母さんの声に背中を押されるように、僕は戸口から自分の部屋まで駆ける。扉を一枚抜けただけ。小さな家だ。でも、そこかしこに温かい思い出があった。
簡素な木のベッド、白いシーツ、そして年季ものの机。僕の部屋だ。窓から差し込む光は相変わらず、穏やかだった。
僕は机に駆け寄る。
それは、僕の机の上にあった。
−−カメラ。
父さんが仕事で使っていたお古だ。茶色い木のフレームと鈍い金属の本体、レンズ。初めて撮った写真は吹き抜けるような空をバックに白い花が揺れているというものだった。
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