sky/monster

□Chapter.1 aileron
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僕は空にいた。
飛んでいる。
夢じゃない。
空に上がるといつも不安になる。
夢から醒めてしまうような。
自分にはどうしようも出来ない感覚。
その不安を手にとって粉々に砕いてしまいたいけど、それは伸ばした僕の手をするりと抜けていく。
……だから、
操縦桿を握る手が重い。
「来た」
飛竜の骨格と木で作られた機体。複座のコックピットの左手の壁を這う伝令管を通して、後ろの彼女は言った。複座とはいうものの、2つのシートは結構離れていて、伝令管を使わなければ、会話すらままならないのだ。
僕は正面のプロペラを見た後、腕時計に視線を落とした。定刻だ。僕の首は左に向けられる。
赤い十字架。3つ。
別の基地からの討伐隊だ。翼を振って合図を出す。後ろの彼女が、機体の側面にある電灯の光を明滅させて、通信を始めた。僕は機体を3つの十字架に寄せていく。
本当に似ている、と僕はいつも思う。
僕がはじめて見た飛行機に。
1-RFワイヴァーン。それが、この三機の名だ。シュレイド王立技術院製。速度はそれほどでは無いが、舵回りの滑らかさを徹底的に追求した機体だ。赤いカラーリングは王国軍特務部で唯一飛行機を扱う、第三特務部の仕様となっている。
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