sky/monster

□Chapter.2 cross rings
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しゅんしゅん。
穏やかな音。
アギトのエンジンみたいな。
しゅんしゅん。
暖かい。
僕はどこにいるのだろう。
しゅんしゅん。
右手が疼く。
敵は?
撃ち込まないと。
トリガは?
しゅんしゅん−−。
あ。
光景……。
撃ち込んだ緑の目。紫の体躯。
わきをすり抜ける。その寸前、
視界が紫になった。
……毒、だ。
吸いこむと人体に害を及ぼす。ゲリョスの毒。紫色のゲリョスは死の間際、アギトのコックピットに毒液を吐きかけたのだ。
しゅんしゅん。
ピントがあう。綺麗な木目。天井のようだった。僕はベッドに寝かされている。毛布が暖かい。
「大丈夫?」
先生が僕の顔を覗き込むように見ていた。
いつものように硬質な響き。空にいるときとは正反対だ。いや、空にいる彼女が本物なのだろう。今はスイッチ・オフ。
「はい」声は出た。
そう、と言いながら、髪を耳にかける仕草は気怠げ。彼女が空に上がる時いつも着る防寒服の捲り上げられた裾から、白くほっそりした腕が伸びていた……片方だけ。反対側の袖は力を失ったように風に漂う。
「それで、あの後、どうなったのでしょうか? ……少佐」
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