sky/monster

□Chapter.0 take off
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風景を切り取る。
それが自分のものになる。
僕は写真が好きだった。
だから、
僕は振り返って。
追ってきているであろう母さんをカメラに収めようと、
振り返って。
−−失った。
僕のカメラが捉えたのは、輝きを放つ床の木目と、母さんの赤にまみれた白い腕と、その続きを断ち切った瓦礫の山と。
リオレウス。
隅が汚れた覗き窓ごしに、棘棘しい赤。
そのブルーの瞳が僕を捉える。
僕の目は動きを止め。
喉はかすれた音を吐き出すだけ。
ゴト、と僕の手からカメラが落ちた。ガバリ、と王者の口が開かれた。
血の、火の、死の、臭い。ぬぅ、とやけにゆっくりした動きで、僕を呑み込もうとする暗闇が近づいてきて……。
不意に。
王者は動きを止めた。そして、崩れ残った僕の家から首を空へ突き出す。屋根が邪魔でその顔を僕は見ることができない。リオレウスは、唯一見えている足を、力を蓄えるようにしならせると、僕に尻餅をつかせる爆風とともに空へ舞い上がっていった。
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