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□教師が見た彼らの授業参観風景
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「えー、では次は問題2の棒線1を和訳してください」
教室の奥に居る怪しげな集団をやや気にしつつも教師は次に当てる生徒を探します。
ちなみに一人だけ生徒が居ません。
彼は嫁(自称)にハネムーンに連れて行かれました。
今頃グアム辺りでお好み焼きを焼いています。

一人だけ居ない教室で教師が目を付けたのは、おそらくこの場で一番まともそうな生徒です。
だって、親に紛れておめぇら何処の学校だと言いたくなる様な子がたくさん居るんですもの。

「……豪炎寺」
教師は白い髪の子を当てました。
だって一番まともそうだもの。

「……『ユウカは兄のシュウヤが大好きです、でも兄のシュウヤの方がユウカの事をもっと好きです』」
ダメでした。
豪炎寺君、なんか頬を赤くしてます。

「豪炎寺君、此処は『ユミは夫のトムが大好きです、でも息子のジャックの方がもっと好きです』ですからね」

「これは妹と兄の愛の文です」
豪炎寺君、なんか効果音で『キリッ』と聞こえそうな程に真面目な顔で言いました。
しかし幾ら真面目な顔をしたって問題文を変えるのは止めましょう。

「私もお兄ちゃんが大好きだよ!」
三つ編みの小さい女の子が言いました。
『お兄ちゃん頑張れ』と書かれた旗を持ってます、明らかに女の子の字ではありません。

豪炎寺君は更に誇らしげに顔を真っ赤にしました。
この、シスコンが。

そうです、豪炎寺君は鬼道君と同じくシスコンなのです。
通称ソウルブラザーです。
豪炎寺君には何を言っても無駄なので、教師は授業を進める事にしました。

とりあえず教師は、当てれば何かが起きそうで仕方ない生徒は敢えて避けて、その他の生徒を当てます。
勿論何事も無く過ぎます。

それから十数分後。
「では次……」
「ちょっと待った!」
大声がしました。

教師には聞き覚えの無い声です。
つまり生徒ではありません。

ならばと見ると、そこに『円堂君ラブ!』と書いた鉢巻きと『円堂君ファンクラブ』と書いた法被を着た赤毛の子が立っています。
 
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