儚く咲いた一輪花

□bizzarro
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そろそろ時間のようなので、秀吉は窓から屋根の上へ上った。
勿論窓ガラスなんてないよ?

そういやEDでも上ってたな…と思い出してると、半兵衛があたしを荷物のように担ぎ上げて屋上に上った。

うはーいい景色…
向こうには山があって緑が広がってて…
その手前には城下町が見える。

秀吉が兵の前に出たのか、歓声が凄い…

…あれ、なんで屋上に?



『わ、わ、わっ!
なんであたしまで…!』

「紹介するんだから当たり前だろう?」

『だからって!
豊臣軍の1、2と一緒に並べないよ!』

「大丈夫だ、君は3番目くらいに偉い存在だからね」

『それなら…って良くない!
…3番目?どういうこと?』



半兵衛はあたしの言葉を無視して、秀吉の一歩下がったところに立つ。

3番目って…半兵衛の次?

半兵衛に弟とか居たよね?
弟より上なの!?
っつーか何でそんな位が高いの!

するとまた兵士達から歓声が上がった。

どうしたらいいのか、一体自分は何をしているのか理解できず、ポカンと見ているばかり。

半兵衛がしてる話なんて耳に入ってこない。
でもこれだけは聞こえた。



「新しい仲間を迎える事となった。
彼女は豊臣の姫の地位に立つ。
ここに来て、まだ日も浅い。
何かあれば助けてやってくれたまえ」

『…………は?』



半兵衛の後ろ姿をポカンと見つめる。
姫?姫って何?
そんなの聞いてないんだけど。

まだよく知らないあたしを仲間と呼んでくれるのか…何だか半兵衛らしくないな。
半兵衛って疑い深いと思ってたのに。



「ほら、おいで」

「…上手くいく」



半兵衛と秀吉が振り返って微笑む。
…そ、そうか、挨拶しないと。

でも何て言うべきなんだ?
いきなり姫だと言われても…
こう言う事は、先に本人へ伝えておくべきなんじゃないだろうか。

しかし後ろで惚けていても仕方ない。
あたしは頭を必死に回転させながら、ゆっくりと2人の元まで歩いた。

きっと10秒も経ってないのに、その時間は何分もかけてる感覚に陥った。

そして半兵衛と秀吉の間に立ち、兵士達の前に姿を現した。
間とか…恐れ多いな。

シンと静みかえる…

もの凄い人の数を見て圧倒される…
兵の数はきっとこれからも増えるんだろう…と思いながら声を張り上げた。



『初めまして、和泉 海璃と申します!
…正直、急すぎて挨拶なんか何も考えてなかったのですが』



兵士達は何を言ってるんだとでも言うように、ポカンとしてあたしを見てる。

あーもー何を言えばいいの。

チラッと半兵衛を見ると、顔に笑みを浮かべていた。
こんにゃろう、誰の所為だと思ってるんだ。

そして、また軍の方に目を向ける。



『剣や刀も上手く使えないし、お姫様みたいな気品もありませんし、正直豊臣軍に居ていいのかも疑問です。
いや、居ちゃ駄目のような気がします。
迷惑であれば、いつでも言ってください。

しかし、覚悟はできてるので何でも立ち向かおうと思ってます。
簡単には負けてやりません。

あ、あと私のような女が上に就いていいのかという抵抗もありますので、様付けは出来るだけしないでください!』



最後によろしくお願いしますと言って頭を下げ、挨拶を終わる。
兵達は何故かクスクスと笑いながら拍手をしてる。

飾りっ気は全くないと思うが…
印象に残ったんだろうか…

よく分からない挨拶になったな。
でも即席なんだから仕方ない、と自分を正当化した。

半兵衛も、海璃くんらしいと言って笑っていた。
笑うところじゃないんだけど。
アンタの所為だぞ。

秀吉は別段変わりはない。
きっと兵の前と半兵衛の前でのメリハリを付けているんだろう。

そうして挨拶は無事に終え、皆からは見えないところに座って一息ついた。
(1人で屋根から降りれない)




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