Song

□IMITATION BLACK
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ずっとキミに言いたかった

   たった一つの言葉なのに





「…一緒に居てくれるのかい?
辛いと分かっているのに」

『今更すぎる…
一緒に居させてよ、ずっと』



それ以上に辛いのは、半兵衛と居れないことなんだから。

そう呟くと、半兵衛は軽い口付けを交わした。





抑えきれない衝動が

  壊れてしまうのなら





「…好きだ」

『うん、知ってる。
だから…もっと』

「移っても良いのかい?」

『半兵衛がかかった病気で死ぬのなら本望よ』



私の髪を一撫でして、顔を寄せた。

まず髪を一房掬い、その髪に口付け。
そしてまた唇に軽い口付けを交わした。




愛し愛され
 狂いそうなほどに

甘く熱いくちづけは
  IMITATION





『ん…ふ、ぁ…ぅん……っ』

「…はぁ……」



軽い口付けを何度も繰り返し、いつの間にか激しくなって。

息を吸うために漏れてしまう声が恥ずかしくて嫌…

自分が出してる声とは思えないほど変な声…こんな声出したくないのに。

歯列を舐められ、舌を絡め取られ。
それがとても気持ちいい…





麻痺する感覚

  遠くなる意識





フワフワした意識。

そこから現実に引き戻されたのは、着物を着崩される感覚。
そして、押し倒される感覚だった。

恐る恐る目を開けると、そこには悲しげに歪む表情をした半兵衛がいた。

私は無意識に半兵衛へと手を伸ばす。



『大丈夫…今は私しかいない。
弱音くらい吐いて良いの』

「っ……風月…」

『いつも溜め込んでばかり。
ねぇ、私も背負いたいよ』



そう言うと半兵衛は、彼の頬に添えた私の手を握りしめた。

痛かったが顔には出さない。
斬られたときの痛みの方が強いし、何より握られた痛みまでもが気持ちよく思えてしまったから。



「死ぬのが、恐いんだ。
それこそ今更だけどね…

いつでも死ぬ覚悟はできていた。
できているつもりだった。
討死する覚悟も、病死する覚悟も」



私は何も言わず、いつもと違った弱々しい半兵衛の声に耳を傾ける。

目の前にある竹中半兵衛という儚い命が、今にも散ってしまいそうだった。



「僕の…秀吉の夢が叶うのなら、僕の死など安いものだと…
しかし風月が現れ、いつの間にか死にたくないと思い始めた」

『……っ!』

「秀吉の夢が叶った世界で、風月と歩む未来を見てみたいと」



もう、だめ。

半兵衛の言葉を聞いてき、我慢の壁など一瞬にして崩れ去った。
ボロボロと涙が溢れる。



「…風月、泣かないで」

『うるさい…
半兵衛が、泣かないから…悪い…』



適当な言い訳をしたあと、私は半兵衛はまだ死なないと何度も何度も呟いた。

まるで、壊れてしまった人形のように。

それから私達は、身体を重ねた。
二人とも壊れ物を扱うかのように優しい手付きで。

最初で最後の行為をした。





溢れる想いと 真実

 黒で塗り潰して





『ずっと…愛してるから…』




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