儚く咲いた一輪花

□scheszando
1ページ/4ページ


スケルツァンド
[戯れるように、おどけて]






「いいかい、海璃くん。
元気に挨拶するんだよ」

『のっけから小学校の先生みたいな事言わないでよ』

「小学校?」

『あー…勉強教えるとこ、寺子屋』

「どうでもいいけど。
大きな声で、失礼のないようにね」

『ん、大きな声だね。
分かった分かった』



大広間の前に来てグダグダと長いこと注意された。
いやぁ面倒臭い、分かってるってば。

大きな声で…
そして襖を勢い良く開けた。



『和泉 海璃!ここに参上ぉぉぉ!!
皆さんこれから宜しぐぶぅ!?』



隣にいた半兵衛さんに、頭をグーで殴られた。
めっちゃ痛い。



『痛いな!何をする!』

「入室前に何て言ったか覚えてるかい?
失礼のないようにと言っただろう!!」

『大きな声って言ってたじゃん!!』

「朝にした挨拶の時のようにしろと言ったんだ!」

『えぇぇ!?言ってないよ!?』

「分かるだろう!
それぐらい感じ取りたまえ!!」

『無理に決まってる!
遠回しに言い過ぎだし!』



大広間にいる皆はそっちのけで怒鳴り合う2人。
皆の視線があたし達に降り注ぐ。

その視線に半兵衛が気付くのと同時に、笑い声が大広間内に響いた。



「あっははははは!
海璃お前最高だな!」

『お、コロちゃん!
ありがとーね!』

「はっはっは!
随分と海璃に乗せられておるな!」

「秀吉…僕は乗せられてなど…」

「ふふっ…兄上、海璃さんと漫才ですか?」

「久作……」



半兵衛が頭を抱えてしまった。
爆笑の渦に飲まれ、大広間は一気に騒がしくなる。

あたしのおかげだな!
良かった良かった。

けど、その中で1人だけ不機嫌そうな顔であたしを睨み付けてる人がいた。



「半兵衛様…何故こんな奴を…!」

「あぁ、三成くん…すまない、我が軍にこんな物を引き入れてしまって」

『こんな物とは何だ。
あたし未来から来たんだぞ?
きっと色々と役に立つって』

「残念ながら、ね…」



どーゆー意味だ。

銀髪の人って、何かとあたしを腹立たせたがるらしい。
あ、でも久作は別。

これくらいじゃ怒らないけどね!



「私は‥それでも認めない!
認めてたまるか、こんな小娘!」



無言になる皆様…
あー場の雰囲気が悪くなった。

あたしはポリポリと頭を掻きながら三成に問いかけた。



『…じゃあ、どうやったら認めてくれる?
兵士10人抜きとか?』



流石に無理だが。



「はっ、お前のような小娘など1人も倒せるわけがないだろう」

『ほーぅ、言ったな?
1人倒せばいいんだね』

「できる物ならな」



全くもって面倒だ。
剣道や空手の力を発揮する時だ!なんて意気込みはない。
だってまず、そんな強くないし。

それに絶対兵士さんのが強いしさー。
あたし怪我してるしさー。
死に物狂いになっちゃうじゃん。

ま、だからと言って逃げる気は毛頭ないけど。



『まぁ、それは後回しとして。
宴とやらは楽しまないの?』

「…海璃ってホント楽な性格してるよなぁ。
ある意味羨ましいぜ」

『そこが痺れる憧れるぅ!って?』

「そこまで言ってねーけど」



コロは一息ついたあと、近くにあった肉に手を伸ばした。
コロを筆頭に1人、また1人と宴を楽しみだした。



「約束しろ。
兵士を倒せなかったら大阪城を出て行くと」

『もー分かったってば』

「…三成よ、斯様な約束をして太閤達は納得するのか?」



聞き覚えのない、少し掠れたような声か聞こえた。

その声の主は三成の影になっていて見えなかったが、三成が後ろを振り向いたおかげで顔を拝見することができた。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ