儚く咲いた一輪花
□scheszando
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スケルツァンド
[戯れるように、おどけて]
「いいかい、海璃くん。
元気に挨拶するんだよ」
『のっけから小学校の先生みたいな事言わないでよ』
「小学校?」
『あー…勉強教えるとこ、寺子屋』
「どうでもいいけど。
大きな声で、失礼のないようにね」
『ん、大きな声だね。
分かった分かった』
大広間の前に来てグダグダと長いこと注意された。
いやぁ面倒臭い、分かってるってば。
大きな声で…
そして襖を勢い良く開けた。
『和泉 海璃!ここに参上ぉぉぉ!!
皆さんこれから宜しぐぶぅ!?』
隣にいた半兵衛さんに、頭をグーで殴られた。
めっちゃ痛い。
『痛いな!何をする!』
「入室前に何て言ったか覚えてるかい?
失礼のないようにと言っただろう!!」
『大きな声って言ってたじゃん!!』
「朝にした挨拶の時のようにしろと言ったんだ!」
『えぇぇ!?言ってないよ!?』
「分かるだろう!
それぐらい感じ取りたまえ!!」
『無理に決まってる!
遠回しに言い過ぎだし!』
大広間にいる皆はそっちのけで怒鳴り合う2人。
皆の視線があたし達に降り注ぐ。
その視線に半兵衛が気付くのと同時に、笑い声が大広間内に響いた。
「あっははははは!
海璃お前最高だな!」
『お、コロちゃん!
ありがとーね!』
「はっはっは!
随分と海璃に乗せられておるな!」
「秀吉…僕は乗せられてなど…」
「ふふっ…兄上、海璃さんと漫才ですか?」
「久作……」
半兵衛が頭を抱えてしまった。
爆笑の渦に飲まれ、大広間は一気に騒がしくなる。
あたしのおかげだな!
良かった良かった。
けど、その中で1人だけ不機嫌そうな顔であたしを睨み付けてる人がいた。
「半兵衛様…何故こんな奴を…!」
「あぁ、三成くん…すまない、我が軍にこんな物を引き入れてしまって」
『こんな物とは何だ。
あたし未来から来たんだぞ?
きっと色々と役に立つって』
「残念ながら、ね…」
どーゆー意味だ。
銀髪の人って、何かとあたしを腹立たせたがるらしい。
あ、でも久作は別。
これくらいじゃ怒らないけどね!
「私は‥それでも認めない!
認めてたまるか、こんな小娘!」
無言になる皆様…
あー場の雰囲気が悪くなった。
あたしはポリポリと頭を掻きながら三成に問いかけた。
『…じゃあ、どうやったら認めてくれる?
兵士10人抜きとか?』
流石に無理だが。
「はっ、お前のような小娘など1人も倒せるわけがないだろう」
『ほーぅ、言ったな?
1人倒せばいいんだね』
「できる物ならな」
全くもって面倒だ。
剣道や空手の力を発揮する時だ!なんて意気込みはない。
だってまず、そんな強くないし。
それに絶対兵士さんのが強いしさー。
あたし怪我してるしさー。
死に物狂いになっちゃうじゃん。
ま、だからと言って逃げる気は毛頭ないけど。
『まぁ、それは後回しとして。
宴とやらは楽しまないの?』
「…海璃ってホント楽な性格してるよなぁ。
ある意味羨ましいぜ」
『そこが痺れる憧れるぅ!って?』
「そこまで言ってねーけど」
コロは一息ついたあと、近くにあった肉に手を伸ばした。
コロを筆頭に1人、また1人と宴を楽しみだした。
「約束しろ。
兵士を倒せなかったら大阪城を出て行くと」
『もー分かったってば』
「…三成よ、斯様な約束をして太閤達は納得するのか?」
聞き覚えのない、少し掠れたような声か聞こえた。
その声の主は三成の影になっていて見えなかったが、三成が後ろを振り向いたおかげで顔を拝見することができた。
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