儚く咲いた一輪花
□passion
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パッション
[受難]
『へいへいそこのおにーちゃん。
待ったかーいな?』
おどけて言ってみた。
あたしの中に宴の余韻が残ってたらしい。
「煩い」
そしてこの一言で一蹴される。
何とも悲しい事よ。
そこには三成と筋骨隆々の大男がいた。
…コイツと戦えってか。
容赦ないなぁ。
「それより、何だ?
その珍妙な格好は」
『珍妙…やっぱそう思うんだね。
だって着物動きにくいし、制服のが動きやすいんだもん』
「…ますます気に入らない」
『まぁまぁそう仰らず。
で、その人と手合わせすればいいの?』
「…そうだ」
三成がチラリと隣を見た。
やっぱりか。
三成さん鬼畜ー!
鉄球兵だっけ?
それを操ってそうな人だ。
『本当に容赦ない…
その人倒せばいいんだね?』
「あぁ。
無理だろうけどな」
『やってもないのに決め付けないでよ』
三成のこんなとこがムカつくんだよね。
大男が戦闘態勢に入った。
渋々あたしも戦闘態勢に入る。
…ただの空手の構えだが。
「海璃様、正々堂々勝負しましょう」
『正々堂々、ねぇ。
(なら体格差のない人がいいな)』
「ふん…さっさとしろ」
その声と同時に、大男が向かってきた。
大男は予想通り、動きが少し遅かった。
右ストレートが入りそうだったから、少し後ろに跳んだ。
…何か、違和感。
本当に少しだけだったのに、1mほど後ろに跳んでいた。
現代なら普通に跳んだって、こんなに跳べない。
あたしみたいな常人なら尚更だ。
そう長々と考えながらも、相手の止まらないパンチを避け続けた。
『(考えながら避けれてる…?
おかしい、2つ同時に何かするなんて…
不器用なあたしには無理なのに)』
「あれほど大口を叩いていたが、避けるだけで精一杯か?」
『え?あ、あー…
そんなワケじゃないんだけど…』
「海璃様、なら撃ち込んでください!」
Mみたいな発言は止めてほしい。
しかし、言われたからには立ち向かおう。
大男の左からのパンチを左手で受け止め、そのまま手首を掴んで自分の方に引っ張る。
こっちに向かって来る反動も使って、大男の腹を殴った。
「が、はっ…!?」
『え?ちょ、待っ』
筋肉に覆われた腹に、私の拳が突き刺さる。
崩れ落ちてくる大男に巻き添えを食らって倒れてしまった。
しかも気絶したようだ。
確かに全力で殴ったが…気絶する程あたしの力は強くない筈なんだけど。
っつか重い…そして汗臭い!
『ん゙ぁぁぁぁ!潰れる!』
「馬鹿な…相手は大男だぞ…」
『三成ぃ!助けとぅえぇぇ!!』
「半兵衛殿の言うとおり…
やはり素質があると言うのか?」
聞く耳持たず状態。
もう駄目だ…息が出来なくて苦し…
「三成くん、だから言っただろう?
海璃は豊臣軍に必要なんだよ」
「半兵衛様…」
「ふふ、人を見る目には自信があるんだ」
半兵衛…はんべー!
こっちを見て、潰れかけてるあたしを!
その願いが通じたのか、半兵衛がこっちを見てくれた。
「おやおや、随分と苦しそうだね」
『はんべ…助け…』
「助けて欲しければ、跪いてねだるんだね」
『はっ!?
(この状態で!?無理に決まってる!)』
クスクスと楽しそうに笑う半兵衛。
こんなにもSだったとは思わなかった。
しかも助けてくれる様子がない。
…が、代わりに何かを取り出した。
「君、早く起きたまえ」
「い゙っ!?」
ビシィっと音が鳴り、大男が驚いて飛び起きた。
嗚呼…やっと綺麗で新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込むことができた…
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