儚く咲いた一輪花
□leicht
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ライヒト
[快活に、楽に]
前回のおさらい!
追いかけられたり、敬われたり。
そんな事が何度も何度も続いた。
少し嫌になった。
おしまい!
町の人から逃げるようにして帰ることに。
今は森のような場所を歩いてる。
あー静かだ。
走り疲れて、少し休もうと木を背に腰掛ける。
この買い出しで新たに気付いた事。
異様に身体が軽く、かなり身体能力が高くなっている。
気付くのが遅かったかもしれないが。
逃げるとき、着物にも関わらず速く走れた。
前に兵士と戦った時にバックステップで避けたときも…お腹を殴ったときも。
全ては身体能力向上のお陰なんだろう。
背にした木を見上げる。
…ジャンプしたら、少し高い枝でも登っていけるんじゃないか。
そう思ったら、試さずにはいられないのがあたしで。
荷物を傍らに置いて立ち上がる。
そして枝に向かって跳んでみた。
結果。
難なく枝に飛び乗れた。
『うっわぁ…凄い…
2mは軽く跳んだんじゃ…』
これは楽しい…っ!
荷物の事は…まぁ置いといて。
あたしはその木の枝をピョンピョンと跳んで上へと登っていった。
『おぉぉ…!あたしヤバい!
忍者になった気分!
やっば!あはははは!
……何だアレ』
頂上とまでは行かないが、大分と上まで辿り着いたあたし。
何かを目の端に捉えた。
何か…オレンジっぽい感じの何か…
あたしの髪の毛より少し色素が薄いかな。
ジーッと目を凝らす。
オレンジの…髪の毛?が目立つが、他はよく分かんない。
とりあえずそれに向かって、声を荒げて大きく手を振ってみた。
『すぅぅ……
おぉぉぉぉい!!!』
「………?」
遠くのオレンジ髪が動いてこっちを見た。
表情までは分からない。
…と、観察をしてると。
木の枝から足を滑らせた。
『ぁ…え、嘘っ……!』
「…!?」
はっはっは、めっちゃ落ちる。
んな悠長に構えてられるか!
悲鳴を上げながら、どんどん落ちてく。
地面がどんどん近付いてく。
もう走馬灯が駆け巡るほど。
…だが、あと数mの所で暖かい物にダイブした。
『あぶっ!』
「っはー…ビックリした…
いきなり落ちるんだもん…」
『ぁ‥あれ…?』
「ちょっと、大丈夫?」
どうやら暖かい物は人肌のようで。
目の前にあるのは迷彩柄で。
聞いたことのあるボイスを聞いて、ゆっくりと見上げた。
『さるとび、さすけ、さん?
忍者…の…』
「うわっ、俺様ってそんなに有名?」
忍者が有名ってどうなのよーとか言って笑ってる。
目の前にいるのは紛れもなく佐助で。
その口から発せられるのは紛れもなく…
『子安ヴォォォォイッス!!』
「えぇ!?な、何!?
どうしたの!?」
『あ、こっちの話』
木に座り直して佐助と話をする事に。
怪訝な顔をされたが、そこはスルーで。
木の下には降りないみたいだ。
「ったくー。
あんなとこで何してたの」
『えと、木登り?』
「何で疑問型?
普通の子はあんなとこまで登れないよ。
それに、よく俺様のこと気付いたね」
アンタ何者なんだ?と佐助の目が語りかけてくる。
説明を求められてもなぁ…
超人的な身体能力を持った姫です…なんて言えるはずもなく。
否、言いたくない。
『うーーーん……
少し身のこなしが軽い自称ただの民だからね』
「何それ!?」
『またの名を海璃と申す』
「またの名じゃなくて名前でしょ!?」
佐助と喋ると漫才になる件。
名字は言わなかった。
だって戦国乱世で名字があるのって、姫とか位の高い人ぐらいだもんね。
「…海璃ちゃんでいい?」
『うん、何とでも!』
子安が…子安があたしの名前を…!
あ、佐助か。
そう思ったら半兵衛も石田さんボイスなんだよね。
良い声ってクるものがある、主に下腹。
『佐助こそ何してたの?
ここって豊臣領だし‥見付かったらヤバいよ?
あたしだって豊臣領に住んでる人間だしさ』
「海璃ちゃん、俺様忍なんだよ?
そう簡単に見付からないって」
『簡単に見付かったじゃん、あたしに』
「うっ…俺様って忍の才能ないのかな…」
『かもね〜!』
「そこは否定してよ!」
佐助いじり楽しーい!
もうノリ良すぎ!
佐助と話してると、いつの間にか笑ってしまってるし。
『ま、見付かんないようにね?
見付かっても逃げ方や逃げ道いっぱい知ってそうだけどさ』
「何か負け犬みたいなんだけど」
『違うの!?』
「違うよ!?
真顔で驚かないで!
忍者と負け犬一緒にしないで!」
『あはは、分かってるよー』
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