儚く咲いた一輪花

□risvegliato
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リズヴェッリャート
[活発に、元気に、目覚める]






「…また酷い怪我じゃのぉ」



お兄ちゃんがあたしを椅子に座らせ、じっちゃんが顔をしかめ、足首を見ている。

どうやら打撲らしい。
さっきは真っ赤だった足首が、今は紫色になっていた。

手合わせして、半兵衛の軽い挑発に乗ってしまったと言うと、じっちゃんは呆れた顔をした。



「感情に身を任せすぎじゃ」

『なんか腹立っちゃってさー…』

「半兵衛様に敵うはずなかろう」

『ゔっ……
じっちゃん、傷口に塩を塗り込まないで…』



氷水で冷やしてると、じいちゃんは包帯を取り出す。
そして足首を直角に曲げて固定し始めた。

…のは、いいんだけど。



『痛い痛い痛い!
足首っ…痛めてるのに…!』

「今だけじゃ、我慢せい」

『ちょ…お手柔らかにぃぃぃいったいって!』



ギュウギュウに縛ってる!
巻いてるんじゃなくて縛ってる!
それ治療とは言わない!

っつか、じっちゃん何でニコやかなの!?
お兄ちゃんも傍らで笑うなよ!



「ほれ、できたぞい」

『うっ……く…
あれ?楽に立てる…』

「荒療治も、偶には良いじゃろう?」

「俺ら治療を受ける側としては苦痛以外の何物でもないけどな」

『お兄ちゃんに同感。
でも痛みがなくなるのは凄いなぁ』



荒療治も必要…ってこと?
でも、さっきの痛みはあんまり経験したくないんだけど…

そう思いながら、その場で軽く跳んでみる。
直後、お兄ちゃんの拳骨があたしの頭に飛んできた。



『いっ…たぁ!?』


「まだ治ったわけじゃない。
安静にしてろ」

『…ごめんなさい』

「何だか、本当の兄妹みたいじゃのぉ」



クスリと微笑を浮かべるじいちゃんを見て、またお兄ちゃんは複雑そうな顔をした。

医務室をあとにして、あたしはゆったりとした歩調で自室へと向かう。
お兄ちゃんは部屋まで送るといい、あたしの歩調に合わせて歩いてくれた。



『あ、そうだ。
聞きたいことあるんだけど、いい?』

「ん?何だ?」

『パパや半兵衛には属性があるけど、お兄ちゃん達にもあるの?』

「ぱぱ…?」

『あ、秀吉サマのこと。
お父さんって意味なんだよ』

「…豊臣軍はいつの間に家族になったんだ」

『お、家族って良いねぇ!
じっちゃんもいるし!』



呆れて呟くお兄ちゃんを対象に、あたしはヘラリと笑った。
黒ちゃん辺りは親戚のおじさんとか?

そんなあたしを見て苦笑を漏らすお兄ちゃん。
和やかで仲良し、いいじゃない。



「それで、属性の話だったな。
俺と小六は火、長康は氷、官兵衛は風と…」

『ちょちょちょ、待った!あるんだ!?
覚え切れないから書いとくよ!』

「別に覚えるほどでもないと思うが」



ガサガサと袂を探り、紙とペンを取り出す。
なんでペンがあるかって?
取り出しましたー!いぇーい!

筆だとメモ書きするには使い辛くって。
能力は使うなって言われてたけど、これくらいなら許してもらえるよね!

お兄ちゃんは取り出したペンを物珍しそうに見ていた。



「それは何だ?」

『あ、見かけたことないよね。
西洋の筆みたいな物だよ』



そう言いながら、お兄ちゃんの属性は火、と紙に書く。

お兄ちゃんはペンの細さや墨を付けなくてもいいことに驚いていた。
ペンって便利だよね、インクが内蔵されてるんだもん。



「そんな物があるのか…
どこで手に入れたんだ?」

『うーん…ペンの存在を知ってて取り出したと言うか…』



説明し辛かった。
キリシタンに貰ったって言った方が良かったのかな。
ザビーだっていたし……あぁでも出会ってないから変に思われるか。

次はあたしが、お兄ちゃんに向けて苦笑を漏らした。
まだ疑問符を浮かべていたが、お兄ちゃんの顔にいきなり焦りが見えた。



「海璃!紙から手を離せ!」

『え?…ぅ、えぇ!?』



手を叩かれ、紙を落としてしまう。

手を叩かれたことに驚き、次に紙に異変があったことに驚いた。
紙が…燃えていたのだ。



『な、なんで…!?
具現化だけじゃなかったの!?』

「具現化…?」

『あ…えっと…
これは見てもらった方が早いと言うか…
兎に角《火》を消さないと!
火事になっちゃう!』



そう叫ぶと、燃えていた《火》がボフンッと音を立てて消えた。
床は少しだけ焦げ目が付いている。

何がなんだか分からず、呆然として見るお兄ちゃんとあたし。



『消え、た』

「……海璃がしたのか?」

『したのかも…』

「…さっき言ってた"具現化"って何だ?」

『あ、それはね』



紙に《林檎》を描いて取り出す。
驚くお兄ちゃんに取り出した林檎を渡した。

…内緒にしておかなきゃだけど。
ここまでバレて隠すって方が無理な話だ。
まぁ…仲間だし大丈夫だろう。



「絵から…取り出した?」

『ちゃんと食べれると思うよ。
…流石に気持ち悪いかな』

「…戸惑いは、まぁあるけど。
気持ち悪くはない…寧ろ凄いな」



そう言って、お兄ちゃんは林檎をじっくり眺めてから丸齧りした。

人間離れした能力を、気味悪がらず。
更に出した林檎を食べた。
それだけで、何故か救われた気がした。



「お前は考えすぎだな。
海璃が考えているほど、豊臣軍は白状じゃないぞ?」

『…そうだよね。
みんな…あったかい』



嬉しくて頬が少し緩んだ。




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