儚く咲いた一輪花
□abbandono
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アッバンドーノ
[感情のおもむくまま]
『…いたい』
今日も大阪城でゆっくりしとけばよかったかもしれない。
今日の仕事全てを終わらせ、訓練も程々にしてもらい、暇になったあたしは昨日と同じ時間帯に城下町へと出没していた。
しかし、足すごい痛い。
あれー?テーピングしてんのになー。
悪化しちゃったかな?
フラフラしながら街を練り歩いていると、簪が並ぶお店を発見。
立ち寄って色とりどりの商品を眺める。
可愛い…凄い綺麗。
1つ手に取ってまじまじと眺めた。
紫と銀色を基調とした簪がシャランと綺麗な音を奏でた。
「嬢ちゃん、1つどうだい?」
『あ、いや。
ごめんなさい、今お金持ってなくて…』
「!!海璃様じゃねぇですかい!」
『え?あ、あー…』
簪片手に、頬をポリポリと掻く。
少し居心地が悪くなって目を逸らした。
「海璃様なら話は別です、どうぞ貰ってやってくだせぇ!」
『ちょ、おじさん…!』
簪を手に握らせられる。
あたしは慌てて首を振って拒んだ。
それを見たおじさんは、別に気に入ってるのがあると思ったのか、陳列されている他の簪へと目を移していった。
『おじさん、違うの』
「は…何が、ですかい?」
『これは商品なんだから…ちゃんとお金を払わないと駄目です。
そこに姫などの位なんて関係ありません』
「いや、しかし……姫様からお金を貰うなど、恐れ多いもんですって」
『それなら、この簪を一生懸命作った職人さんに失礼でしょ?』
「……。」
『今は手持ちがないから買えないけど、またお金を持ってきたときに必ず買いますので…
それまで取っておいてくれませんか?』
「、勿論ですとも!」
ありがとうと礼を言い、また簪に目を戻した。
取っておいてくれ、だなんて…それもお姫サマ特権な気がする。
言わない方が良かったかな?
銀色を基調としている中に、豪華そうな紫の菖蒲の花が飾り付けられている。
凛としたように、上品そうな印象を与えるその簪はまるで…
「それにしても、その簪がやけに気に入ったようですねぇ」
『うん…似てるから』
「似てる?」
『ある人の雰囲気に、とてもよく似ているんですよ』
一旦お別れだと言うように一撫でして、神聖にも感じるそれを机に置いた。
私が付けても似合わないかな…?
そこで改めておじさんを見ると、優しく微笑んでいた。
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