儚く咲いた一輪花
□variable
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ヴァリヤーブル
[変化する.不安定な]
部屋ですることがなくなった。
箪笥、机と座布団、押入れ、本棚、小さな引き出しが部屋にあり、大体のものは見て回った。
箪笥の中には羽織もの。
緑系統が多かったが、濃紺色もあった。
どれも元就さんに似合いそうな色だ。
机の上には筆と墨、あとは紙があった。
手紙用…だろうか。
押入れは言わずもがな、お布団が収納されていた。
本棚の本は見てないが、当たり障りのない物語ばかりのようだ。
当たり前だが、戦術書なんてものは置いている筈がない。
そして1番ビックリしたことは…
この小さな引き出し。
何が入ってるのかと思えば、なんと聖書だった。
中を見てみると、見覚えのある河童の髪型をした太い男性の絵…
それだけ見て聖書を閉じた。
3秒で閉じた。
これは…元就さんの害となるものでは…
あとで処分しておこう。
「あれー?
海璃ちゃん、また会ったね」
『!この子安は…佐助!
どこにいるの?』
「この子安って何」
部屋を見渡すが誰もおらず、佐助は上から降ってきた。
上を見ると、屋根裏があるのか1つの板が外されている。
きっとそこから降ってきたであろう佐助の表情は、疑問で満ちていた。
いやー声がねぇ…
つい間違えちゃった、てへっ。
『こっちの話!
佐助は今お調べ中?』
「うん、海璃ちゃんは?」
『あたし?
なんか今日ここに泊まらせてくれることになったの!』
「はぁ!?マジでぇ!?」
『まじ!すごくね!?』
ポカンとする佐助。
やっぱり衝撃的のようだ。
確かに見た目は冷たそうだもんね。
関わってみると実はそこまで冷たくなかったり。
いやー人間分からないものだねー。
「凄いなんてモンじゃないでしょ…
どんな手を使ったの?」
『実は…特に何もしてないんだよなぁ…
諍いを良い方に持ってっただけ』
「はー…やるねぇ…
俺様、今日の夜に立つから送れなさそうだな」
『そうなんだ…
帰りは何とかして帰るよ!
そんなに迷惑かけれないしね!』
「迷惑とか考える子なんだ…意外」
『どーゆーことだ!』
弱めに殴ろうとすると、容易く受け止められた。
軽く、なんだからいーじゃん!
忍のプライドみたいなのがあるのかな…
「…っと、誰か来るみたいだね」
『そうなの?
あたし分かんない』
「そりゃあね。
これに気付いたら忍の才能あるよ」
『…もう行くの?つまんない!』
「でも見付かったら俺様の命の危機!
ってなわけで、そろそろ退散するぜ」
『むー…分かった、またね。
元就さんの忍に見付からないように!』
「も、毛利の旦那を元就さん……
俺様がそんなヘマしねぇよ、じゃな」
佐助がその場から瞬時に消え去った。
上を見ても既に穴は閉じられている。
忍者って凄いなぁ…
あたし忍者の才能ないらしいから無理だなぁ…
「海璃様、失礼して宜しいですか?」
『はいはーい、どうぞ!』
予告通りに誰かが来た。
襖が開かれると、三つ指をついた女中さんだった。
足音というか、床が軋む音なら聞こえたけど…気配ってやつは全く分からなかった。
これって修行したら身に付くようなものじゃないよね。
「夕餉の準備が整いましたので、お声をかけさせて頂きました。
ご案内致します」
『本当?ありがと!』
ふと外を見ると、まだ日は高かった。
16時…くらいかな。
随分と早い、豊臣とは大違いだ。
元就さんの早寝早起きの為だろうか。
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