夢幻綺譚
□2 見えるモノと見えないモノ
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「……先生居ないみたいだな」
保健室には誰も居なかった。
私はそこのベッドに倒れ込む。寝転がると、何だかすごく楽になった。
「香月、5限ってもう始まってる?」
私が訊くと、彼はかなり驚いた。
「結構前に本鈴なったんだぞ。おまえ、まさか気が付いてなかったのか?」
「……え……」
全く気が付かなかった。
「どれくらい前?」
「15分くらい前だったと思うけどな……」
まさか……、そんなに経っていたのか? 私は15分も突っ立っていたと言うのか?
……信じられずに時計へ目をやると、確かにそれくらいの時間だった。
と、ある事に気が付いた。
「香月……、私の所為で5限さぼり?」
「だな」彼は笑って答えた。
「いーよ別に。俺の嫌いな授業だから、ちょっとラッキーって思ってるとこなんだ」
……それで良いなら別に構わないけどね。
香月は教室へ戻る様子も無さそうに、ベッドの端に腰掛けている。
そして、ふと口を開く。
「なぁ水城、星輝さんの言ってた女の子に、本当に心当たりは無いのか?」
「………………」
彼が、あまりに真剣に言うので、私は何も言えなかった。
何となく、言いづらかった。