短編
□来ない明日
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あの子は周りから可哀想だと思われている。
笑顔の可愛い、夢と希望に溢れた子だと。
だがそれは本当か?
子供に希望を持っているのは大人で、
子供が絶望を持っているなど思いはしない。
もし、彼等に私のした事がばれたなら、
彼等は私を極悪非道、最悪の殺人者だと詰るだろう。
けれど私は気になどしない。
望んだのは、他の誰でも無い、
あの子。
気付かない彼等の偽善を嘲笑ってやろう。
子供は希望で溢れているのだなどと思い込んでいる、
彼等の偽善を。
『いつも笑顔で挨拶してくれて……』
『あの日も元気にうちの子や他の子達と遊んでいたんですよ』
『どうしてあの子がこんな目に……』
『こんな事をするなんて……許せない!』
その笑顔は、絶望を隠す仮面。
元気なふりで、無邪気なふりで、大人達の偽善に答える。
死は彼女の希い。
死は彼女の望み。
その原因をつくったのは、他の誰でも無い、
『大人』である、彼等。
そして世界は今日も、
大人達の偽善で塗り固められてゆく。