短編

□来ない明日
1ページ/1ページ


 あの子は周りから可哀想だと思われている。

 笑顔の可愛い、夢と希望に溢れた子だと。



 だがそれは本当か?



 子供に希望を持っているのは大人で、

 子供が絶望を持っているなど思いはしない。



 もし、彼等に私のした事がばれたなら、

 彼等は私を極悪非道、最悪の殺人者だと詰るだろう。



 けれど私は気になどしない。

 望んだのは、他の誰でも無い、



 あの子。



 気付かない彼等の偽善を嘲笑ってやろう。

 子供は希望で溢れているのだなどと思い込んでいる、

 彼等の偽善を。



 『いつも笑顔で挨拶してくれて……』

 『あの日も元気にうちの子や他の子達と遊んでいたんですよ』

 『どうしてあの子がこんな目に……』

 『こんな事をするなんて……許せない!』



 その笑顔は、絶望を隠す仮面。

 元気なふりで、無邪気なふりで、大人達の偽善に答える。



 死は彼女の希い。

 死は彼女の望み。



 その原因をつくったのは、他の誰でも無い、

 『大人』である、彼等。



 そして世界は今日も、

 大人達の偽善で塗り固められてゆく。





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ