短編

□gray sky
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 彼女は、無機質な建物しか見えない窓に目をやり、ふと呟いた。
「──それでも、この街は優しいんだよ。私が居ても居なくても変わらないから……」
 そんな灰色の世界の中に、私達はひっそりと生きていた。



   gray sky



 私達は、同じ学校の同じ学年の違うクラスの生徒だった。
 知り合ったきっかけは、私と彼女が昼休みを同じ方法で潰していた事。私達は二人共、昼食を摂るとすぐに図書室へ行っていたのだ。お互いいつも同じ人が居るな、とは思っていたものの、特に声を掛ける訳でもなく一学期を過ごしていたのだが、ある日ふとした事から話すようになった。
 何が会話のきっかけになったのかはもう忘れてしまった。きっと彼女もそうだろう。私達はすぐに十年来の友人同士であるかの如くお互いを理解し合うようになったのだから。そんな事は些細な事でしかなかったのだ。



「……ユキ、さっきから同じページを開いたままだよ」
 昼休み、いつもと同じ様に私達は図書室で本を読んでいた。本を開いたままぼーっとしていた私に、向かいに座るアカリが呆れた様な笑みを浮かべている。
「あー……どっかに飛んでた……」
私が答えると、アカリは納得した風に頷いた。
「あぁ……、こんな天気だからね」
「うん、こんな天気だから」
 二人で窓の外をみやる。
 切り取られた空はやたらと青くて、私達に不安を与えてくる。ここはお前達の居場所ではない、と告げられた気がして居心地が悪くなる。
「……やっぱり私達は少数派の人間なんだねー……」
 私の言葉に向かいに座る彼女は静かに笑う。
「今更だよ。まさか知らなかった訳じゃないよね?」
 私は微笑みを返答にした。




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