夢幻綺譚

□プロローグ
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プロローグ



「あ、あのね……わたしっ……わたし、とても大変なことになるかもしれない……っ。……もしかしたらこの世から、い……いなくなっちゃうかもしれない……っ。ど……どうしたら、どうしたらいいと思う……!?」

「……どうって……。何があったのか全然わからないよ……。ちゃんと全部話して。少し落ち着いてからでいいから。ね?」

「……わかった。でもね、これを確かめようだなんて思わないで。そこへいってみようだなんて思わないで。お願いだから、それだけは約束して。あと、誰にもこのことは言わないで。誰にも、だよ。いくら親しい人でも言わないで。お願い。……お願い本当に、本当に。それだけは約束して……」

「約束するよ。絶対にそんなことはしないから。約束はちゃんと守るから……」

「……ありがとう……それを信じて全部話すからね。
 ──あのね、こないだおねぇちゃんの学校へいったときなんだけど……。あのね……『唄』が聞こえてきたの……。とても優しくて、でもどこか悲しい『唄』が……。私、それが気になって……ついついその『唄』の聞こえてくる方へいってしまったの。……そんなこと、しなければよかった……っ。気が付いたらどこだかわからない、寂しい場所に居て……、私と同い年くらいの女の子が居たの……。その子は着物を着てて、お人形さんみたいで……その子が私の傍に来てこういったの。
 ──『あなたはここまで来ることができたのね。合格よ。あなたには資格があるわ……』って。
 何のことだか全然わからなかったけど、そういった女の子の目が、なんだかすごく怖くて……こわくて……こわ…く…て……」

「! カスミ!?」

「……へ…平気だよ……。 でね、いつの間にか最初に居たところに戻ってたの……。そのときは夢でも見てたのかな……って思ったんだけど。それから……それからしばらくして……あの女の子……あの……女の…子…が……────」

「ねぇ! 大丈夫!? どうしたの! ねぇっ!! カスミってば!!」

「……いやっ! ……やだっっ!! ……こないで……っ! こないでよ……っ!!」

「……どうしたの!? ねぇってば! ────カスミ!!?」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」




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