夢幻綺譚

□1 ありえることとありえないこと
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1 ありえることとありえないこと



「まず、大雑把に説明しておくと、南校舎に1、2年の教室。中校舎に3年の教室、食堂、職員室。北校舎に特別教室があって、……体育館とプールは見ればわかるし、ま、こんなもんかな」
 まだ始業ベルが鳴るには30分ほど早い、朝7時30分頃のこと。
 私は今日転入してきた従姉妹の星輝麻乃に学校の中を案内していた。
「あのー……、いいんですか? 小夜さん……」
 麻乃がなんだか不思議そうに私を見て訊く。
「何が?」
「いえ……その、高校ってそんなすぐに編入できるものなんですか? 『ここに転入すればいいんじゃない?』って小夜さんが言ったの昨日じゃないですか」
「できるんじゃない? 現にできてるんだし」
 私がそう答えたにも関わらず、まだ麻乃は不思議そうな顔をしている。
「そんなことはおいといて。……北校舎から案内するよ。あそこは特別教室ばっかりだから、こんがらがるかもしれないけどね」
 北校舎へ向かって歩き出した私に麻乃は慌ててついてくる。私は学校案内を再開した。




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