夢幻綺譚

□3 どうでもいいこととどうでもよくないこと
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 ──その日の帰り道。
 麻乃は私の所に居候しているから一緒なのは当然だが、何故か香月も一緒に帰っていた。
「星輝さんの居た学校って、七不思議とかあった?」
 ……どうやらこれが目的らしい。
 彼は好奇心たっぷりに、色々と麻乃に聞いていた。麻乃は少し困りながらも律儀にそれに答えていた。まったく、ご苦労なことだ。
 私は二人の会話をただ聞いているだけだったが、なかなか面白い事が分かった。
 麻乃の前の学校には七不思議がちゃんとあって──と言う言い方も変だが──、彼女はそのほとんどに遭遇してしまったらしかった。麻乃はいわゆる "霊感のある人" の様だ。香月はそんな彼女をうらやましそうに見る。
「いいな、それ。俺、そういう話とか好きだけど、実際体験した事って全然無いんだよ。うらやましいな」
「そうですか?」麻乃は不思議なものでも見る様に香月の方を見た。
「わたしはむしろ、そんな事無い方が良いと思いますよ」
「何で?」
「だって……そんな事他人に言っても普通信じてくれないじゃないですか。単なる冗談だろうと思われるだけですよ。変な子だと思われたり、ある意味で怖がられたりするんですから。
 ……おかげで、わたし……友達全然居なかったんですよ……」
 麻乃はひどく哀しそうに言った。最後の言葉なんか、風にさえ消されてしまいそうな程小さな声で、私には聞こえたけれど、香月には分からなかった様だった。
 ……麻乃にも色々あるんだな、とそう思った。




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