精霊の舞姫
□プロローグ 朔の日の夜
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プロローグ 朔の日の夜
今夜は朔の日(新月)であるため
月の光は全く無く唯一の明かりと
言えるものは、所々に立っている街灯だけだった。
深夜、そんな暗く人気の無い夜道を大学生くらいの女性が一人歩いていた。
今通っている大学が終わった後の平日と週末の土日の週二日から週三日、美希は午後四時半から午後九時半までファミリーレストラン
でバイトをしている。
そのため家に帰るころには、どうしても夜の十時を過ぎてしまう。
いつもはバイトが終わった後は同じ大学で仲のいいルームメイトでもある女の先輩と一緒に帰るのだが、その先輩は今はあいにく実家
の母方の叔父のお葬式とお通夜に出席するため、昨日から母方の実家に家族とともに帰ってしまっている。
そのため美希は夜、バイトから一人で今暮らしているアパートへ帰るさいには心細さを感じずには入られなかった。
「なんだか、さっきからずっと誰かにつけられてる気がする・・・」
美希は先程からずっと誰かにつけられているような、そんな気配を感じていた。
だが美希はそんな気味の悪い考えを振り払おうと首を左右に激しく振った。
「ううん、きっと暗くて人気のな
い道を歩いてるからそう感じるだ
けよっ。うんきっと気のせいよ、
絶対そうに決まってるわ!!」
美希はまるで自身に言い聞かせるかの様に一人呟くと美希は、心細さを振り払うかのように歌を口ずさみ始めた。
この曲は美希の大ファンでもある二人組みの某人気ロックグループが歌っている曲で、美希が特に気に入っている曲でもあった。
しばらくの間美希は周りの雰囲気に怖がりつつも美希は一生懸命怖くないフリをした。
コツッ・・・コツッ・・・コツッ・・・。
ヒタッ・・・ヒタッ・・・ ヒタッ・・・。
コツッ・・・コツッ・・・コ
ツッ・・・。
ヒタッ・・・ ヒタッ・・・ ヒタッ・・・。
美希がはいているミュールのクツ音に混じって、まるで裸足で歩いているような足音がかすかに聞こえてきた。
その足音はまるで美希の歩調に合わせているかのようだった。
(やっぱり誰かにつけられて
る・・・。もしかして不審者?それともチカン?やだっ、もしそうだったらすごく気持ち悪い・・・。振り返ってもし、もしも不審者かチカンだったらその時は、コンビニか警察に駆け込んで助けを求めよう。よしっ、それじゃあ1、2の3でいくわよ。せーの1、2の3!!)
美希は勢いよく振り返った・・・だがそこには誰もいなかった。
「な・・・んだ、やっぱりわたしの気のせいだったんだ。」
美希がホッとため息をついたのも束の間、誰もいないはずの道からまたあのヒタッ・・・ヒタ・・・っ、という裸足で歩いているような足音が聞こえてきた。
その瞬間美希を別の意味で言いようのない恐怖が襲い頭の中で警鐘が鳴り響き全身の毛が泡立ち、逃げたくとも美希の足はまるで根が
生えてしまったかのように動かなかった。
(に、逃げなきゃ・・・・・早く
ここから逃げなきゃっ。じゃないと、じゃないと何かに捕まる!!)
なぜそう思ったのか、それは本能なのかはたまた別の何かなのか、それは美希自身にでさえも分からなかった・・・・・。