空しき旋律*儚き唄

□第1箱
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『ふぁー…暇だ』

窓際の一番後ろの席で机の上に伏せる様に体を伸ばす。窓から射し込む光が心地よくて、このまま眠ってしまいそうだ。
退屈な日常に飽きたから、異形や異端が集まるというこの箱庭学園に入学した。十三組(アブノーマル)は学校に来なくてもいいみたいな事言われたし、入学式とか面倒だったから始めの内は学校サボってたんだけれども、超がつくほどの真面目なわたしは、今日から毎日学校にくることにしたんだよ。わたしったら良い子!でもさあ……

『十三組(アブノーマル)はみーんな学校に来てないってどうよ』

面白くない。何のためにわざわざこの学校に来たと思ってるんだ、なんて。……ま、昨日まで来てなかったわたしも人のこと言えないかもしれないけど。
教室はがらんどう。退屈しのぎのはずが、誰もいない教室で退屈に過ごす羽目になっている。腕時計の針はまだ始業の時間を示していないから誰もいないのが当然なのかもしれないなんて自分を慰めてみても、虚しいばかり。誰かが突然教室に現れるなんてことは当然なくて。空しく響く時計の音と木漏れ日だけがこの空間を支配する。

『あー……一人いたか』

生徒会長 黒神 めだか。
一年生にして98%という圧倒的支持率で当選したとかいう化け物生徒会長。あれはわたしと同じ異形で異端な香りがする……まあ、同じ十三組(アブノーマル)だしね。

『なーんか面白そうだよね』

一つの足音が教室に近づいてくる。好き好んで十三組(ジュウサン)に近づいてくるような狂気(クレイジー)な神経を持った生徒なんていないから……この足音の主はただ一人。



ガラリと教室の扉が開く。
予想通りそこにいるのは黒色の制服を身にまとった黒神めだかとおぼしき人物。ぐるりと教室を見回し、わたしの方をみて動きを止める。教室に自分以外の生徒がいるのが驚きかな?彼女はどんな表情を浮かべているだろうか。わたしは伏せていた顔をゆっくりとあげ、立ち上がり彼女の方をむく。ああ、面白くなってきた。

『初めまして黒神会長ちゃん』

「ん?見かけない顔だな」

『あ、自己紹介がまだだったね。わたしは和水水泡。黒神会長ちゃんと同じクラスの』

とりあえず、にっこり元気にご挨拶ー。第一印象は大切だからね。

「和水同級生か、よろしく。同じクラスに友人がいなくて少々心細かったのだ」

彼女の言葉に嘘やは見えない。お世話ではなく本気で喜んでいるみたいだ。へえ……“化け物”なーんて言われてるけど、結構人間らしいとこあるんじゃないか。

『ほんとー?じゃ、わたしが黒神会長ちゃんのクラスでの友達一号だね』

黒神めだか…異常(アブノーマル)な生徒会長――面白そうじゃないか。

『あと…そうだ。わたしのことは水泡って下の名前で呼んでよ。友達の印ってことで』

名字プラス同級生だと和波と一緒になっちゃうからね……言わないケド。

「わかった。では、水泡も私のことをめだかと呼ぶがよい」

『馴れ馴れしいでしょ。わたしが会長ちゃんを名前呼びなんて…』

「友達の印なんだろう?」

ふっと会長ちゃんは笑う。あまりにも綺麗な顔で笑うので、不覚にもどきっとしてしまいそうになる。自信に満ち溢れ、それでいて柔らかく包み込む……ああ、支持率98パーセントも納得だ。

『わかったよ。じゃ……改めて。ーーよろしく、めだか』

めだかの顔が心なしか赤みを帯びてみえたのは、多分、気のせいだと思う。



○月×日 晴れ

生徒会長黒神めだかと友達になりました。
近々、役員募集会があるらしいんでめだかを冷やかs……めだかの勇士を見に行きたいと思います。


(オトモダチが出来ました)
(10.01.06/12.05.26改)
 

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