空しき旋律*儚き唄
□第2箱
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足取り軽やかにわたしは生徒会室に向かう。暇だし、めだかにも会いたいしねー。うん、そして何より暇だし。
めだかによると最近“善吉”っていう幼なじみが生徒会役員になったらしい。ついでにわたしも生徒会に誘われたが、それは丁重にお断りした。……面倒なことはキライなんだよ。
にしてもさあ……“善吉”っていうめだかの幼なじみ――面白そうじゃないか。普通(ノーマル)とはいえ、あんな素敵な異常(アブノーマル)と十三年も一緒にいるんでしょ?どんな人なのか気になるじゃん。今日は彼も生徒会室にいるかな?意気揚々と生徒会室の扉をあける。
『はろー、めだか』
返事はない。生徒会長というプレートの置かれた机には誰の姿もなかった。めだかいないみたいだね、ちょーっと恥ずかしい……。
恐る恐る生徒会室を見回せば、男子生徒が一人。とりあえずお辞儀をしとくかな。
『こんにちは』
「…こんにちは」
生徒会役員の黒い制服を着ている所からして、彼が新しく生徒会に入ったというめだかの幼なじみらしい。
『きみが善吉くん?』
「な…なんで俺の名前」
『当たり?いやー、めだかに“善吉”っていう幼なじみが新しく生徒会に入ったって聞いたから』
「めだか……ってお前めだかちゃんの知り合いなのか!?」
『うん。めだかはわたしの友達だよ善吉くん』
そうそう大事なオトモダチってね。
「ぜ…善吉くん…」
『あれ?ちょっと馴れ馴れしかったかな…?
めだかがいつも善吉って呼ぶからなれちゃってて』
「いや…べ、別にいいんだけどよ」
善吉くんの顔が心なしか赤い。パンツでも見えたか?見えるタイミングなんかなかったよなー何故だろう。
「そういえば…お前の名前は?」
心なしか赤みを帯びた頬をポリポリと掻きながら善吉くんが聞いてくる。
『言ってなかったっけ?
水泡だよ和水水泡。まあ気軽に水泡って呼んでよ』
「お、おう。……和水?」
『わたしの名字がどうかした?善吉くん』
「和水って和波の名字と一緒だよな…まさか…まさかな……十三組に片割れがいるとか言ってたけど水泡がめだかちゃんと同じ異常(アブノーマル)だとは思えねーし…」
ん?今、善吉くんは片割れの名前…和波と言ったね、言ったよね。善吉くんは和波の知り合いってこと?いや、普通(ノーマル)過ぎる和波に知り合いは有り得ないから……数少ない友達って所か。和波の箱庭学園(ここ)での友達は人吉と不知火ちゃんだからー。……不知火ちゃんは半袖ちゃんの事でしょ?ってことは……まさかねえ。
『ねー善吉くん』
「んあ?」
『善吉くんのフルネームってさー』
「人吉善吉だけど……それがどうしたんだよ水泡?」
おーけー了解。ちょっと話を整理しよう。
わたしはめだかと友達で、善吉くんはめだかの幼なじみ。和波の数少ない友達が善吉くんと半袖ちゃん。でもって半袖ちゃんはわたしのオトモダチ、と。全く……世界は狭いねー。
『善吉くん』
「けっ今度はなんだよ」
『いつも片割れがお世話になってるみたいで…』
「片割れ…?水泡お前もしかして…」
焦ってる焦ってる。わたしが和波の片割れだって言ったらどんな顔をするんだろう。想像するだけでも面白そうだ。ついつい口角が上がる。
『そのもしかして。わたし和水水泡は正真正銘和波の片割れです。改めてよろしくね善吉くん』
○月□日
めだかの幼なじみで和波の友達な善吉くんと友達になりました。
口を金魚みたいにパクパクしてる善吉くんは面白がったです。
(可愛い玩具を見つけました)
(100108/120607改正)