空しき旋律*儚き唄

□第5箱 それに書いてあったから
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「『わぁっ!』」

廊下の角を曲がると女の子にぶつかってしまっいました
少女漫画じゃあるまいしリアルでそんなことがあるなんて思っても見なかったよ

『大丈夫?』

彼女の持っていた教科書やノートは床に散らばり、女の子は尻餅をついている

手を差しのべてみれば女の子は顔を真っ赤にしながらわたしの手をとった
気分は白馬に乗った王子様だね
ぶつかっちゃったのは、わたし自身だけど

「…あの」

さっきまで伏していたからわからなかったけど、女の子は茶色の髪を高い位置で結び眼鏡をかけていた
よくみると顔も可愛らしい

『はい、どーぞ』

散らばってしまった教科書やノートを拾い上げ、わたしは彼女にそれを差し出した

「え…あの…ご、ごめんな、さい」

『謝らなくていいのにー
 わたしの不注意でぶつかっちゃったんだし』

「…あ、ありがとう」

照れてるのか彼女は下を向いていた
さっきからずっと顔が赤いし
まぁ多分彼女は照れ屋さんなんだろう
仕方ない
わたしとしては目を見て話したいのだけどね

『これから廊下を曲がる時は人にぶつからないよう気をつけてね?
 喜界島ちゃん』

「え?なんであたしの名前…」

『それに書いてあったから』

喜界島ちゃんの手にある教科書やノートを指せば、彼女も納得したようでわたしはくるりと向きを変え歩きだそうとした


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