空しき旋律*儚き唄

□第10箱 誘おうなんざ
1ページ/2ページ




『久しぶりだね不知火総帥
 ふふふっ今は理事長と呼んだ方がいいのかな?』

「こちらこそ久しぶりですよ水泡さん」

『あなたがわたしを箱庭学園(ここ)にスカウトした時いらいだもんねー』

「おや、そうでしたか」

『だから数ヶ月振りかな?』

「そうですね
 和波くんは元気ですか?」

『うん、まあ元気にやってるみたいだよ
 半袖ちゃんから聞いてないの?』

「袖ちゃんはなかなかそう言う話をしてくれないのでね」

『ふふっ半袖ちゃんらしい』

初めは互いに腹の探り合い
気持ち悪いくらい友好的に気持ち悪いくらい親切に
わたしが不知火総帥を信頼していないように、不知火総帥もわたしを信用していないから
嘘と本当を織り交ぜた下らないお喋りを続けてたって切りがないよね

『さーて世間話はこの位にして、なにかわたしに用でもあるのかな?』

「流石、水泡さん話が早い
 今日は折り入って水泡さんにお願いがあるんですよ」

『お願いなんて珍しいねー』

「入学前に話した《フラスコ計画》のことは覚えていますか?」

やっぱり嫌な単語が出てきた
だからあんまり不知火総帥とはお喋りしたくなかったんだけどねー
和波にちょっかい出されたら困るし

『フラスコ計画……
 わたしを箱庭学園(ここ)にスカウトした時に言ってた奴だね
 確か…《十三組の十三人(サーティーンパーティー)》は定員一杯だし、一年生はダメなんじゃなかったっけ?』

惚けてみたりしてね

「和水さんは特別ですよ
 そして私が今日和水さんに話したいのは《十三組の十三人(サーティーンパーティー)》のことではありません」

『《十三組の十三人(サーティーンパーティー)》ではない…?』

不味い事になってきた

「異常(アブノーマル)な十三組のなかでも選りすぐられた異常(アブノーマル)な《十三組の十三人(サーティーンパーティー)》よりも更に異常(アブノーマル)な本来ならば有り得ないはずの十四番目」

面白いくらいわたしにぴったり当てはまる
不知火総帥は一体何を言いたいんだろう…

「《異端の十四番目(イレギュラーフォーティーン)》」

異端と言う言葉にどきりとした

「此処で一つ老人の実験に付き合ってくれませんか?」

『サイコロ…?』

異常性をはかるテストかな?

「……こ、これは?」

番号が揃うでもなく普通にばらばらと転がったサイコロに目を疑ってるみたいだねー

面白いったらありゃしない

『どうかしました?不知火総帥』

「いいえ何でもありませんよ
 …それで、どうですか?《異端の十四番目(イレギュラーフォーティーン)》として計画に参加して戴ければそれなりの報酬も用意しますよ」

『不知火総帥…わたしは』

「参加して頂けますか
 水泡さんに参加して戴けるていうなら水泡さんの片割れである和波くんも誘おうと思っているんですよ
 検体名だって考えてあるんです。水泡さんはもちろん《異端の人魚姫》、和波くんは――そうです《二人ぼっち(ロンリーワン)》なんてど
『軽々しくわたしの片割れの事を誘おうなんざ言わないでよ』

不知火総帥の言葉を遮るようにわたしは机を両手で叩きつけた
冷静になるんだ…わたしっ
今かっとなってどうする

『……っごめんね不知火総帥。面白そうな話だけどお断りするよ
 この箱庭学園自体には興味があったけど初めからわたしは《フラスコ計画》に参加するつもりはないからね』

心なしか早口になる
落ち着け落ち着け落ち着け!
わたしは逃げる様に理事長室から出て行った



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ