空しき旋律*儚き唄

□第11箱 只のしがない異常だよ
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「校ー則違反です
 あなたがたの外装には正しい部分がひとつもありません!
 服装の乱れは心の乱れ!
 よってあなたがたの心は乱れに乱れきっております!!」

なんか風紀委員の人が騒いでるねー
わたしには関係ないけど

「そこの人!」

無視して校門を通過しようとしたら頭にボタンをつけた子に呼び止められた

『なにか用ですか?』

今日は早く教室に入ってうだうだしたいんだよ

「なにか用ですかじゃありません!
 その長袖の制服!制服改造は校則違反です!!」

『制服改造なんかしてないよ?』
           ・・
わたしがしてるのは制服改良であって
制服改造なんていう無粋な真似はしてないんだよ

「なにを言っているんですか!あなたの今着ている制服はどこからどう見ても本来の制服と違います!」

『きみの制服だって長袖じゃない?
 わたしの制服が長袖じゃいけない理由はないと思うけど』

「そーゆー問題じゃありません!」

大きな声で怒鳴る風紀委員さん
鼓膜が破れたらどうするつもりなのかねー

『そーゆー問題じゃないならどーゆー問題なの?』

「……っ
 さっきからああいえばこういう
 そういうからに、あなたには何か正当な理由があって制服改造をしているんですか?」

理由か…理由ねー
考えたこともなかったけど此処でそう答える訳にもいかないよね

わたしは少し考える様な仕草をしてから風紀委員さんに答えた

『…半袖だと寒いから?』

「なんで質問への答えが疑問系なんです!」

『理由なんてものはきっかけでこそあるかもしれないけど、結局は曖昧なものでしかないんだよ』

「全く…自分がやっている張本人なんですから理由くらいちゃんと把握…っていうかなんで長袖に改造したのかわからないんですか!?」

『わからない訳ではないよ』

「…じゃあ、わかるんですか?」

『ただ』

「ただ?」

『わかるという訳でもないんだよねー』

「結局わかんないんじゃないですか!」

なんかちょっと漫才みたいで面白い
今度会った時またからかえる様に名前を覚えておこう
えっと…風紀委員さんの名前はー
名前?
わたし彼女の名前知らないじゃん

『風紀委員さん
 名前はなんて言うの?』

「ここでそれを聞きますか!
 …私は風紀委員第三部隊所属の鬼瀬針音ですよ」

『鬼瀬ちゃんね、鬼瀬ちゃん
 風紀委員の鬼瀬ちゃんねー
 よし、ちゃんと覚えたよ』

わたしはそう言うと体を校舎の方に向け再び歩き出した

「そうですかわたしの名前を覚えてくれましたか
 …って逃がすわけにはいきません!」

鬼瀬ちゃんの得意技はもしやノリつっこみなのかな?
つっこみ要員は大切だよね

「あなたにわたしのもう一つの呼び名も教えてあげます
 “手錠メリケンの鬼瀬”というね!」

得意技はノリつっこみじゃなくて手錠で突っ込むでしたか
あれは当たったら痛そうだ
わたしは勢いがつく前に鬼瀬ちゃんの手に持っていた手錠を両手で掴んだ

「え?は?なんで?」

『そんな物騒なもの振り回しちゃいけないよ鬼瀬ちゃん』

わけがわからないという顔を鬼瀬ちゃんがしてるけど
まあ、いいや

『知ってると思うけど手錠ってのは本来振り回すものではなくて、かけるものなんだよー
 ほら、こんな感じで』

わたしは丁寧に鬼瀬ちゃんの左手に手錠をかけた

『じゃあね鬼瀬ちゃん』

今度こそわたしは校舎に向かって歩き出した






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